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[コメント] ブラック・スワン(2010/米)

鍛え上げてやせた女達の生身の背中の魅力に抗しきれない。反る、くねる、蠕動する。およそ普通の身体が示しえない背中という部位の神秘を表わした映画、というだけで十分である。自慰に悶えるナタリー・ポートマンの恍惚の表情などどうでもよい。
ジェリー

ナタリー・ポートマンのかきむしり跡や、ミラ・ニクスの羽の刺青など、そこに眼を向けて欲しいと言わんばかりの可愛い符丁までついているというのに、どうしてだれもこの点に言及していないのだろう。

 こう書いていて気づいたのだが、人によっては私のように背中ではなく、彼女たちの足首に同じようなフェティッシュな関心を寄せているのかもしれない。いずれにしても決定的に魅力的なのは、この映画がどのような場面でも眼、唇まで含めた粘膜や薄肉の皮膚への深い執着を示している映画だということだ。バレエというシチュエーションの導入がなければこうした執着は出せない。

 というよりも、バレエという芸術だけが作り出す、肉体の強靭さと壊れやすさが矛盾のまま共存する美しさが私にとっての魅力の全てであるとすれば、この映画はバレエ映画以外の何者でもないのだ。混ざり合おうとしないものの魅力。調和を拒む美しさ。矛盾のはらみ緊張に満ちたものの美しさ。こうした路線上にナタリー・ポートマンの歪みに満ちた顔が闇夜の牡丹のように美しく浮かび上がる。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)マカロン[*] 緑雨[*]

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