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[コメント] 影を追う男(1945/米)

謎が解決されないうちに次から次に新たな謎や正体不明の人物が登場してくる展開は、ハードボイルド映画の典型で文句のつけようがない。瀕死の主人公を助けたのが縁で結ばれた、たった20日間の妻だった女のために主人公が戦う物語展開には心底痺れる。
ジェリー

ラストの格闘場面で、次第に画面がぼやけ始める演出には、タフな男の意識下の影まで暗示する。戦争に健全な神経を吹き飛ばされた男の心の慄きが見る者の戦争記憶を苦く喚起し、主人公に共感せざるを得なくなる。ハードボイルドというジャンルとフィルム・ノワールというジャンルの両方にまたがった秀作。

この映画のハードボイルド映画としての典型性を保証するのが、1回だけ登場するディック・パウエルのキスシーン。肩や背中の線が崩れることなくいかついままに女の唇に触れる、その格好良さ。目的にのみ生き、色恋に惑わされることのなくなった男の覚悟が見事に形象化されている。

脇役としてはルーサー・アドラーもいいが、虚弱さを狡猾さでカバーしたような卑劣な肥満体を演じたウォルター・スレザックがすばらしい。

(評価:★4)

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