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[コメント] 夢の涯てまでも(1991/日=豪=独=米=仏)

イタリア・フランス・ポルトガル・東京・アメリカを経て、オーストラリアの信じられない奇観の中で終わるヴィム・ヴェンダースのこの野心作は、言葉どおりの未消化作品だ。彼の制作意図は彼の能力のEND(限界)を超えている。
ジェリー

全世界を覆う黒雲のような大きな受難の時代の中で、一人一人が小さなことからお互いを救済しあうことで災禍を克服していく社会であって欲しいという主題や、一人の個人の持つ影響力というものは、地域を越え国を超え全世界に広がりうる可能性があるという主題は、確実に伝わる。しかもこのような主題を持った映画など稀有であることも理解しているつもりだ。可能性への確信をこの映画から受け取ることができ、それは大変うれしいことだった。テーマの大きさは比類がない。

これだけの主題をあらわすのに、しかしながら、この映画のストーリーテリングはあまりに貧弱すぎた。冗長な展開を何とかして欲しいし、ハイテクに頼りすぎの映像処理も勘弁して欲しい。どんどん次のプロットに流れていってしまうタメのなさも残念だ。この映画は、時折、観客に沈思黙考を迫るものでなければならなかったと思う。

この近未来映画の時代背景設定は、2003年2月現在段階の世界情勢に驚くほど似ている。テーマはまさに今日的だ。監督にはもういちど同じテーマでチャレンジしてほしいと切に願う。

(評価:★2)

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