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[コメント] シェルタリング・スカイ(1990/英)

水の溶解力は、物質界の中でも空前にして絶後らしい。この映画もその意味ではまさに水だ。あらゆるものを溶かして済ましこんでいる水だ。
ジェリー

もっとリジッドでコンパクトなテーマの映画をこのむ性癖があるので、高得点をつける気にはならないのだが、それでも次の事だけは言っておきたい。

映画の主題を「自分探し」と見る解釈も、「自分からの脱皮」と見る解釈もいずれも怪物のように呑み込んでしまう力がこの映画にはある。そしてその力はどちらの解釈も瞬時に拒否する力でもある。受容と拒否を同時に成立させる桁違いの磁場が、画面から放出されてくる。強烈なインパクトの映像が、「解釈」「解説」あるいは「翻訳」なんでもよいがあらゆる作文化をあざ笑う。

この映画をどう表現しようか大変に迷った。 映像と言葉がもたれあわない地平にたったひとつ屹立している特異点。 ひたすら受身である事によって絶対的な攻撃性を確保しているブラックホール。 あるいは、トーキー映画という羊の皮をかぶった真正サイレント映画。 散々迷った挙句、コメントの表現に落ち着いた。しかし私はこの映画の何を語ったことになろう。

いずれにしてもしても途方もない作品を見てしまった。

………いや、途方もない作品に私は見られてしまったのである!

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)けにろん[*]

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