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[コメント] 竹山ひとり旅(1977/日)

一つの世界のとらえ方として完璧だろう。花鳥風月を排し、海辺と粗末な小屋と根雪と廃船と海猫で表現される日本。そこにいる主人公がいかにもな孤独な男ではなく、家族や他人に支えられて生きてきた男として描かれる普通さが麗しい。
ジェリー

普通? これを普通というのかと人はいぶかるかもしれない。しかし、徹底して天涯孤独な人物として描かれがちな「座頭市」クリシェを退け、支援され励まされて生きてきた人物として描かれた地上的性質をやはり私は普通と呼びたい。ボサマとよばれながらも隆々とした逆髪を頭に頂く人物としてステレオタイプに陥らずに描かれた高橋竹山という造形のユニークさはやはり褒められてよいであろう。女優たちの地母神的エロチックさもまた賞賛さるべきだ。

いたるところに橋が登場する。まるで竹山が常に橋の上を旅していると言いたいほどに。橋の連結機能を思い起こせば、この頻出は納得がいく。人生が架橋の連続であり、竹山という人物自体が橋なのである。

苛烈な風景描写と状況設定を超えて登場人物たちの関係の中から立ち上る甘やかな抒情を堪能してほしい。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)寒山拾得[*] けにろん[*]

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