コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] コマンチェロ(1961/米)

アクションの連続だけが西部劇ではないことを実証したスクリューボール西部劇。色恋の緩さとアクションシーンのテンションの高さのメリハリがよく、落馬シーンはこの映画の白眉といえる。そしてこの映画で新たに発見したことはマイケル・カーティスの距離感であった。
ジェリー

 一例を挙げると、映画の中盤、病床の主婦が窓を見ると、コマンチが押し寄せて来るのが見える。主婦は思わず悲鳴を上げる。映画の展開としてはここからのテンポの変化がすさまじいのだが、より記憶されるべきことは、窓から見えるコマンチの迫り方、その距離感にある。

 窓から見える映像は、人間目線に立てば50ミリのレンズでとらえられていなければならない。しかし、この窓から伺えるコマンチの来襲はどう見ても、200ミリ程度のレンズでとらえられたものだ。この不自然さ、この作為を、見る者が受け止める機制が問題となる。映画が光学原理に支えられた精密機械と編集によって成り立つということをつい見るものの意識に浮かび上がらせてしまうくらい暴力的な編集を、作為として我々は切り捨てるのか、逆に作為ゆえに受け容れるのか。

 絵画の歴史においては、筆触を消してリアリズムの追求を図った画家の時代もあれば、筆触を生かしてそれを表現としてアピールした画家の時代もある。

 マイケル・カーティスはこのシーンの編集に当たって、映像の筆触を間違いなく意識している。そうした監督とは思っていなかっただけに、この発見は少なくとも私には貴重なのである。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (2 人)ゑぎ[*] 3819695[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。