[コメント] ダウンタウン・ヒーローズ(1988/日)
この映画に、映画らしい「光」がフィルムの一コマにでもいいからあれば許そう。映画に対して決して観客としての傲慢をぶつけてはならないと思うその心を裏切られたような作品だ。良心作の面貌を一見呈しているので、なおのこと失望は深い。
技法論というほどのことまで言及するつもりもないし、その価値ももちろん無いが、松竹大船調という一種の雰囲気が、大船調と表現するだけ無駄だと言い切りたくなるまで曖昧化され、意味が拡散されている。要するに映画をめぐる思考の形跡が無いのだ。
映画にするということの効果や狙いがどこにあるのか本当に制作者と膝詰めで聞いてみたくなる。渥美清を除く全ての出演者と撮影、脚本、美術、監督全てのスタッフを丸刈りにしたい。(決して渥美清を褒めているのではなく映画とは無関係に自分の刻印を示している程度の演技はできているから、けなすほどのことは無い感じているだけである)
おそらく本作は監督が原作に屈従したであろうと想像される。「あろう」というのは、原作を読んでいないからだが、いちいち原作を読んで検証したいという気持ちにすらなれないことをあえて付記しておく。山田洋次監督は、ここから幕末時代劇三部作に到達するまで、映画の呼吸を覚えなおすのに、大変苦労があったことと思う。
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