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[コメント] バベル(2006/仏=米=メキシコ)

「世界の出来事を私の意志によって左右するのは不可能であり、私は完全に無力である」(哲学者ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタイン

見終わった後、しばらく口がきけなかった。些末なストーリーやディテイルはともかく、フィルムに流れる感情の強さ、絶望の深さ、血の濃さ、そして映画そのものの太さに打ちひしがれてしまった・・・。

「バベル」という映画のタイトルにも象徴的だが、明らかに主題になっているのはグローバリズムであり、その弊害だ(つまり反グローバリズム)。もし役所行司がモロッコにハンティングになんて行かなければ・・・もしブラピ夫妻が海外旅行になんて行かなければ・・・いや、そもそも、この世界に誰も産まれてこなければ事件は起きなかった・・・。そんな絡み合う「if」の連続を前にして、人はかくも無力なのだ。

ただ、他の多くのコメントにもあるように、大風呂敷を広げすぎた感は確かにあると思う。のだが、グローバリズムというデカ過ぎて薄ら寒くなる「テーマ」をクソ真面目に語りつつも、群像劇という「手法」を徹底的に突き詰めて、映画的なスリルをスポイルせずに描き切ったアレハンドロ監督の力量の高さと業の深さは完璧に証明されたと僕は思う。エンドロール寸前に添えられた「最も暗い夜の、最も輝ける光」という言葉にも心打たれた。

・・・そして菊地凛子の不細工さも証明された。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)chokobo[*] ジェリー[*]

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