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[コメント] 男たちの大和 YAMATO(2005/日)

相変わらず説明不足の感動巨編
torinoshield

さて、感動する映画の前提となるのはどういった事項なのか。

ぶっちゃけ言わせてもらえば子供や動物を使う手法がある。何故ならこういった類は無垢であり愛嬌があり愛すべきものなのが万国共通だからだ。なので、大して才能のない人は前提としてこういった「道具」を必要とする。

この映画はそういった道具を恋人だの友情だの親だの、そこらをフルに利用して何とかして感動巨編に持って行こうとした意図は見える。しかしながら観ている方にはこの意図がバレバレなわけで恐らく高得点を付けている方々ですらそれをあえて目をつぶった上で評価していると思われる。

何故こういう事態になるかと言うと実は簡単。実際のところの当時の日本の「意図」が読めないから人情喜劇に終始するのだ。

現在のイスラム世界が何故こうも欧米に反発するのか。それは明快であって要するに自分達の自主独立・自由をアメリカが阻害するからなのだ。欧米列強の干渉を排除してイスラム独自の価値観を守りたい。これに異を唱える人はなかなかいないと思われる。(もうちょっと詳しいといるんだけどそれは省略)

で、日本。当時の日本のおかれた状況は今のイランの普通の人達に近い。列強に犯された同胞イスラム世界(イラク・パレスチナ)を開放し単独でアメリカに立ち向かう、というスタンス。もしイランがイラクに軍隊を向かわせたら?それはイラン的には「開放」。しかし今の日本的歴史解釈で説明すると「イランがイラクを植民地にしようとした。だから謝罪と賠償を」となるのだ。それって前提がおかしいのだよ(まあ東アジアでは台湾除きタブーなのだが)。「皆さん中国や台湾や韓国を植民地にするので戦争しましょう」って政府が言って誰か納得するか?100%無理。要は今のイスラムと同じで「アジア植民地解放戦争」だったのだ、一般の認識では。

この前提というか土台が全く説明されない。何故そうなっているかと言うと日本の政府とアメリカがとりあえずこの考えは封印して日米安保で共産思想を封印しよう、って事で合意したからだ。で上記の実際のところは未だに言えない。そこで「日本は植民地主義をしました。なのでアメリカがそれを必死に止めました」という事に未だになっているわけだ。その為に『タワーリングインフェルノ』の様な人間ドラマが必要なわけ。本当はこんな人間ドラマ全然いらんのよ。

つまりこの映画もこのパターンを踏んでいるので前提説明がない。何でここまで乗組員が必死に何かを守ろうとしたのかが伝わってこない。邦画は往々にして「家族を守る為」などというセリフを吐かせるが実際は「アジア開放」が出発点だったのだ。この前提が全く無視されて欠片も出てこないので邦画の戦争映画はギャグスレスレの右翼思想かとにかく反戦、何でも反戦の反戦バカ左翼の映画しか登場しないのである。

まあ早い話がもっとぶっちゃけた話しろと。安心しろ、もうアジア解放戦線なんぞ日本人は夢想せん。もうオランダだのイギリス、フランスが管轄する植民地は壊滅状態だしな。その代わり日本がアメリカの植民地じゃねえかってのはナシで。

(評価:★2)

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