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[コメント] 亡国のイージス(2005/日)

ある意味「日本」をよく表現している娯楽自虐映画。
ピロちゃんきゅ〜

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







この説明不足な混沌としたストーリーでさえ現実の前ではシンプルな方だという事実。はっきり言えば、この規模の事件に対して内閣とテロリストだけでの密室協議という状況が在り得ない。単体の2時間映画という枠では語りきれないんだろうが、それでもなお不足しているキャストと背景がありすぎる。まず根本的に不足しているのが「国家」という規模の大きさだ。しかも日本という大きさ。日本人自身の自虐的な感覚から言えば「たかが日本」という規模に感じるかもしれないが、案外この国は大きい。首相がうーんと悩んでいる背景に実際は1億超の国民がいる。この国民が全く見えない(←監督の皮肉かもしれないが)。この全体像の背景不足の上に、この密室協議に含まれていない蚊帳の外状態の経済界のフィクサーや政治家の面々がいる(←野党は論外)。さらにこの政府を飲み込む形でアメリカ政府もいるはずだが、親にコソコソ隠れて何かをやっている子供のような演出になってて最後まで怖い親(アメリカ)が出てこない。煽る形での韓国政府も出てこない。当然のように中国もロシアも出てこないし国連も出てこない。更になんといっても、あの目ざとい反日メディアたちも完全に不登校という完全無視の、まるで日本が優秀な報道規制可能の国のようだ。唯一名前を出さずに出てきた背景が北という「本国」だけ。いかに北が偉大かっていう意味かな。

しかし、この「政府と現場だけ」という風呂敷の小ささが見ている側に錯覚を起こす。実際はこの話は世界規模の大事件だ。なのに見ている側の文句は工作員の女の子が唐突にチューして何だ?みたいな小スケールの大事件にやっきになる。わけわからん(笑)。正直いって、国の存亡のドタバタにおいて工作員個人の背景がどうのこうのなんて見せられても困るだけの全く意味がない話なのだ。それはその工作員が主役の時に必要な話で、各個人の設定や背景は映画以外の「設定本」とか「亡国のイージス・完全攻略本」の中で書かれていれば充分なだけのプチエピソードに過ぎない。ここは一つ、北の工作員と思われる人たちの気持ちなどいっさい語らず、最後まで貫いた方が北っぽかったんじゃないかな。「よく見ろ、日本人」なんてセリフは余計なお節介だ。北の軍人がなんで日本人を目覚めさせたいんだって話だと思う。その言葉は作者の声だろー感がバリバリ。

そもそもこれだけの邦画を代表する出演陣が出ていながら、それぞれ大物俳優の素材の良さを活かさない演出はまさに「装備(俳優)が立派(優秀)ではあっても使えない自衛隊(邦画)」を現す壮大な皮肉にしか見えなかった。当っているだけにキツイ皮肉だ。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)ヒエロ ぽんしゅう[*] けにろん[*]

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