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[コメント] GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊(1995/日)

そして彼女は何処へいくのだろうか。この広大で有限で、そして人々を隔てる着衣のない隠蔽のなかを。
SAYONARA

自分が自分であることを見失ってしまう程に価値の平面化した状況。飛び交う虚妄と欲望の関係性。水に潜っても底には起源は無い。あるのは情報のなかでの戯れだけ。都市を錯綜する情報の中から生命が誕生することはありえない。生命というものは語り得ないエネルギーなのだから。例えばそれは愛とよばれる正体不明のもの。それらが語り得てしまうのなら。神が完全にいなくなってしまうのなら、国家などと言うものはすでに無くなっているはずだろう。世界観にはリアリティがまるでない。特筆すべきその映像技術。僕らは緻密な色彩の流れに目を奪われる。そしてそこにある、有り得ない思索ですら、その美麗な表象内部の効果音として容認してしまわざるを得ないのだ。そういった全てに思想がない。この思想のなさが問題なのだ。人々はその無力感の中、プログラムされた関係性の中で虚ろに揺蕩う他はないのだという。この作品はその作品の持つ構造でもって過剰なテクノロジーに対するアイロニーを示している。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)ダリア[*] おーい粗茶[*] 秦野さくら[*]

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