[コメント] インソムニア(2002/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
ひとつのウソ。気付いたら、自分の上に重く重くのしかかっている隠蔽したはずのウソ。
忘却するより先に、自分の良心が耐えられなくなる日が来てしまうのがそんなウソ。自責の念は他人に許しを得たところでなくなることはない。許しを得なければならないのは自分自身であって、他人のメイワクなんかではない。
そしてその「ウソ」は、なんどもなんども自分の中で繰り返される。忘れたいのに忘れられず、目をつぶれば何度もみてしまうのがフラッシュバック。
そこに到達したらあとは自分の墓穴掘り。一挙手一動、なにかをするたびに「良心の呵責」という名前の墓穴は深くなり、底なし沼に沈むように、じわじわ窒息しながらゆっくり深みにはまる。
疲れた犬の耳のような顔のアル・パチーノ。冷たい川面を流れる丸太の上で、足を滑らし転落するシーンは怖かった。出口が見つからない冷たい世界。世界からの拒否感。まさに予兆。クリストファー・ノーランと組んだ彼の、息苦しさの描写力はピカ一でした(これまでは120%の演技力が目障りだと思っていたけど)。
クリストファー・ノーランって、「何を語るか」というよりは、「どう語るか」が身上。そこは今回も十分に味わわせてもらいました。
ノーラン調の、やっぱりトボケた調子のユーモアも健在。
やっと、ほんとうにやっとウトウトしたと思ったら突然鳴り出す電話。ベンチレーションの銃(→二転・三転、しかもオチもいい)とか、嬉々としたウィリアムスの「ワイルドカード!」。小便くさい色気でせまる高校生のガキをそこまでやるかというほど追い詰めて泣かしてしまうパチーノ(あ、これはユーモアとは言わないか)。グレエト。
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