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[コメント] 自殺サークル(2002/日)

これはスゴイ。
蒼井ゆう21

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







まず、見た時の自分がかなりくたびれた状態にあった、 というので、余計のめりこめたってのはあると思うんだけど、 それをカッコに入れても面白かった。

■生と死の曖昧性と生の中の虚と本当の曖昧性=ノリの限界超え。

ノリがリミッター切れで限界超えていく感じだろうか。 高校生が笑いながら、ほんとかウソかもあいまいなまま、 皆のノリにまかせていつのまにか校舎から飛び降りたり、 大根切ってたらいつのまにか自分の手切ってたり。 そのような、自分でも気づかずうちに いつのまにか生から死へと変化していく過程。

それは生と死の境目が曖昧になっいるということ。 そしてそれは同時に生と死も曖昧になっている ことなのではないだろうか。 生がはっきりしてれば死もはっきりしてくるし、 死がはっきりしてくれば生もはっきりしてくるだろう。

その自覚もしないまま、曖昧に変化する部分が 怖いところでもあり、妙にリアルに思えた部分。

そして、その作品世界のノリをまたうまい具合にノリで再構成 しているように思えた。

どこからきたのかもわからない、 ウソかほんとかもわからない ノリにいつの間にか巻き込まれている姿を描きながら 更にそれノリで巻き込んでいく。 そして見ている自分もそれに巻き込まれることで、 要所要所の陳腐さがなぜかあんまり陳腐に感じない、 或いは陳腐でも冷めることのない、てことになるのかな。 もしかしたらそういうとこと関係してんのかなとも思う。 そして、そのノリを引き起こす元っていうのが よくわかんなくなっている(生の中の生と虚のあいまい性?) いつものようにノリに乗ってると 下手したら死んでしまう状態。

■「勝手に生きろ」=「勝ってに死ね」。それを可能にする自覚。

勝手に生きろ=勝ってに死ねだろう。 「生きろ」と言う限りにおいては、 その言葉を受け取れるだけの材料を 出しておく責任が伴うだろうと思う。 それをなしにして「生きろ」と言うことは 逆に無責任にさえなるようにも思う。 勝手に生きろとは、一見無責任に見えて、 (まあ実際そうでもあるんだろうけど) 僕はある程度心に響くものがあった。 その言葉を受け止められるぐらいの 材料がこの映画にはあったと思う。

その程度の責任はこの映画には生じた、 そしてそれ以上のモノを出すことも なかなか難しいようにも思う。

さて、生と死が、生というものが曖昧な中で、 今の自分が「生きている」、ということは何を意味するのだろうか。 それはただ単に「死んでない」という状態なのだろうか。 それとももっと積極的に思えるような「生きている」だろうか。

ぼくはこの映画は、 限りなく「死んでない」に近い「生きる」の映画だと思う。 そんなグレーゾーンからやや進んだところををさまようのを 「生きる」とすることをメッセージした映画だ。

それは、最後、女の子がプラットホームに飛び出さず、 永瀬を見つめたまま電車で去っていく。

彼女は少なくとも、 ノリがそのまま死へとも通じていくような 生と死の曖昧さ、に自覚的になったのではないだろうか。 だからといって、彼女が死に走らないといも限らない。 でも、少なくともそこで「死ぬか生きるか」という判断が 自分の中で生じる。そこで死ぬにしても生きるにしても、それは ただ「死んでない」でもなく、ただ「生きてない」でもない、 もっと積極的なものになるだろうと思う。

積極的な「生」と「死」は否応なく、 生を考えようとすれば死を、 死を考えようとすれば生を 考えることになるだろう。

その限りにおいて「生きろ」というメッセージの 材料が有効になるのではないか。 いくら材料を出しても、それを「材料である」と認識できなければ、 それを認識しようという動機がなければ そもそも材料の意味もないだろうから。

曖昧さに自覚し、死にたくなれば自らそれを積極的に選びとること。 それが「生きろ」というメッセージが有効に機能する 前提になるだろうと思う。

・・・という感じで、 ローリーとかはちょっとひいたし、 うーんという部分もあるけど、 ウンチク語りたくなるぐらいに 印象に残りました。

もうちょっと安定してる時にもう一回見てみたい。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)ねこすけ[*] ミュージカラー★梨音令嬢[*] セネダ tredair[*]

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