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[コメント] 散り行く花(1919/米)

いたいけで壮絶でとても繊細な、永遠に曇天が続くかのような社会派メロドラマ。口に指をあてムリに笑顔を作るルシーの儚さときたら…。
tredair

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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時代的にも仕方ないのだろうけれど、「イエローマン」とは何の関係もなかったのだと強調するルシーの姿がちょっと悲しかった。

今どきの映画なら「関係は持っていないけれど、そもそもイエローマンと関係を持つことのどこが悪いわけ?」と展開せざる得ないのではないだろうか。

人種差別主義者の父親という設定からしても「家出したあげく男の家にしけこんだ娘」ではなく「家出したあげく(彼からすれば下等な)中国人の家にしけこんだ娘」であることがドラマをもりあげるうえでも重要なのだろうし、そういった父に助けを請うにはまず「あの中国人のことはなんとも思っていない」「自分は中国人とヤるほど堕ちちゃいない」という「彼の偏った思想にそった考え」を強調するしかなかったのだろうけど。

それでも、あえてルシーを幼いウブな娘と設定し(最期も人形を抱えたまま息を引き取らせるなどけっこうあざとい)、そんなガキっぽい薄幸な少女に(やはり社会的には弱者である)阿片中毒の中国人が一方的に惚れる、という物語にしたあたり、そのあたりに『国民の創世』の監督ならではの「寛容」の限界を見た気もする。

また、私には中国人の夫を持つ友人がいるが、彼女はただそれだけのことで様々な人種的偏見に基づいた誹謗中傷を受けたことがある。あの父親同様のひじょうに馬鹿げた考え方をする人間は、1世紀近く経ったところでちっとも減ってはいないのだ。

「汚い中国人と結婚したお前は日本の恥で、かつ汚れている」。

この世の中に本当に汚い人間がいるとすれば、それはそのようなことを口にして彼らを傷つけた者たち、つまり、この父親の末裔に他ならない気がしてしょうがない。

(評価:★4)

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