[コメント] オズ(1985/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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「オズの魔法使い」が好きだったからゆえか、「見た」という記憶さえ失くしていた。某コメテさんのオズに関する素晴らしいサイト(http://w2.avis.ne.jp/~yoichi/marina/oz/oz01.html)を覗いていて、一緒に見に行った友人や劇場の思い出とともにその「見た」という記憶が甦って来たときも、映画そのものについては「ひどく怖かった」という印象しか浮かんで来なかった。
久々に再見して、その「消えた記憶」の理由がわかった。これは、当時の私にはあまりにショッキング過ぎたのだと思う。
オズの世界から帰ってきたドロシーをめぐる、あまりにダークな現実世界。家を竜巻で失い借金を背負うおじさんやおばさんだなんて、虚言癖と思われ精神病院に拘束されるドロシーだなんて、その頃の私にはあまりに重たすぎる。
また、ホイーラーズが登場してきた瞬間も思わず叫びそうになった。彼らが登場する悪夢に何度も苦しめられたことを、まざまざと思い出したからだ。自転車に乗れなかったうえ足も遅かった私にとって、コンプレックスを逆なでするかのような彼らの存在は本当に恐ろしいものだったのだろう。
が、「劇画オバQ」もブラックユーモアとして受け入れられ毒のある悪夢の魅力もかなり大好きな今の私にとって、再見した本作は実に興味深くおもしろい作品となっていた。
物語自体のブラックさにも味があるし、なんと言っても映像がたいへん魅力的だ。クレイアニメの部分など、びっくりするほどよくできている。役者もよい。ドロシー役の少女にただよう憂いやこまっしゃくれた雰囲気が、この映画独特の<変なリアリティがある、けれどまごうことなきファンタジーの世界>という独特な世界観を更に高めている。
つまり、大人になった私にとっては、これはもう「ただの恐怖映画」ではなくなっていたのだ。今後、もしテリー・ギリアムの『バンデットQ』が好きだという人に出会ったら、私は一も二もなくこの作品をオススメしてしまうことだろう。
それにしてもオトナになるって、なんだかとても嬉しいことなんだなぁ。だって、好きなものが増えちゃうんだぜー。
*「劇画オバQ」とは「オバケのQ太郎」の番外編のような読み切り短編で、Qちゃんがオトナになった正ちゃんたちを訪ねるという話です。そこでは「Qちゃんの大食いが実は正ちゃん一家を経済的におびやかしていた」ということや「いつまでも発明などに夢中になっているハカセは、唯一のオトナになりきれなかったレギュラー陣として当時の仲間たちから白眼視されている」といったことが語られています。この漫画もまた、子どもの頃に読んでいたら「記憶から抹殺」されていたことでしょう…。
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