あの素晴らしい映像世界が健在だったことだけでも、めちゃくちゃ嬉しい。なんて美しい色づかいなんだろうと、黄色いペン1本でドキドキさせてもらえる喜び。青い部屋の中を白い光の粒がはらはらと舞う時の高揚感。椅子の下からのぞくブロンドのあやしい輝き。湿度の高い赤色をした、重たげなカーテンのたゆたい。遠景に見えるエッフェル塔の、なんとも魅惑的な存在感。

自分の絵をやたらと使うのはどうかと思うけど。あまりにもわかりやすいイメージ映像（オオカミの木など）を挿入するのはどうかと思うけど。

また、どうしても話が蛇足ぎみになっちゃうところも健在で、そこもちょっと残念。精神分析ネタや話のつじつま合わせは程々にして、もっとシンプルに話を進めてほしい。無駄で辛気くさい場面をもっと省けば、90分ぐらいのさらに印象深い作品になるのではないかなぁと。