テレビで再見し、劇場で見た時の脱力感を思い出した。 基本的に演出の出来ない監督なんだろう。あるいは映画にとって演出なんて必要ないと思っているのかも知れない。実際、演技されるぐらいならただ突っ立っていてくれた方が良いという役者たちを使って撮られた傑作は多数存在する。しかしこの映画では、それなりに上手く演技する役者たちに演技をさせてしまったことでどうしようもなく貧相な画面が出来あがってしまった。

この監督は過去の映画を何でも水で薄めてしまう。その方が多くの人に飲み込み易く商売として安全とでも思っているのだろう。故にそれを「オマージュ」とは誰も言わない。誰にでも元ネタが判って、撮ろうと思えば誰にでも撮れる画面をこれ見よがしに撮るのは単なるオッチョコチョイといって笑えば良いのか？音楽も役者もそれなりの人材を使って適度なお買い得感を演出するのは上手いが。

しかし、この作品とヒッチコックの作品（なんでもいい）に同じ点数がつけられる不条理もこの世界には可能性のひとつとして有り得るんだということは記憶に残さなければいけない事実として受け止めようと思う。