自衛隊の武装蜂起というハードな内容で、ゆるーいコメディが大半を占めるパトレイバー前期OVAシリーズの中で異彩を放った『二課の一番長い日』。それを叩き台により深化させたのが本作『機動警察パトレイバー2 the Movie』と言えます。OVAがクーデーターという直接的な事件を扱ったのに対し、映画はクーデターに見せかけたテロ（情報の操作、寸断により混乱を巻き起こし、東京とその平和の脆さを浮き彫りにする）という捻りが加えられているのがミソでしょうか。

またこれは三角関係のメロドラマでもあります。柘植、南雲、後藤。彼、彼女の想いが明確に語られることはほとんどありませんが、それ故に抑制された心情が垣間見える瞬間は強く印象に残ります。代表的なのがラスト直前。「あなたを逮捕します」と手錠をかけ、拘束した後に互いの指を絡ませる。この動きのエロチックなこと！ （遠くで見やる後藤隊長が「結局俺には連中だけか」と独りごちるのも堪りません。決行直前に「俺、待ってるからさ」と告白したものの振られて玉砕しているだけに）

上記以外にも、この映画には美しい、それこそスクリーンの向こう側へ行ってしまいそうになるシーンが幾つもあります。例えば爆破されたベイブリッジを見上げ、荒川と後藤隊長の禅問答が延々と続く。あるいは鏡面化したビルに黒々としたヘリが映り込む。戒厳令で出動した戦車に雪が降り積もってゆくところなど。これだけで2時間でも、いやあと10時間でも見続けていたいと、そう思います。

そんなわけで、これは本当に堂々の5点。