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[コメント] おとうと(1960/日)

市川監督の代表作であり、文学的解釈と映像のこだわりが見事に合致した芸術的作品。凛とした岸恵子と屈折した川口浩の兄妹が生み出す繊細な心情表現と日常のドラマ。
TOBBY

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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画面の色調は監督のこだわりとそれに答えた宮川カメラマンが生み出した「銀残し」という手法。これはフィルムの元の色調を落とす手法で独特の淡い色調が出る反面、非常に手間隙がかかる。最近では『プライベート・ライアン』が試みていて同じ色調なのに気付きました?。さてこれは、幸田文、原作の家族の物語です。ある種テーマからセンチメンタルな匂いが漂いはしますが、市川監督はメロドラマ的解釈はぜずに、そこに姉である岸恵子の毅然とした態度、弟である川口浩の青春の光と影、そして母の田中絹代複雑さ、父森雅之の素直に慣れない様を見事に浮き彫りにしてみせ味わい深い作品に仕上げています。ウェットにならずにある種ドライな視点できちんとドラマを追って行く様は構成力に非凡な才が必要。見せ場は多くあれど物語のクライマックスはやはりラストだと思うのですが弟が絶命した際に病院で悲しみよりも未来に向かって立って行くような岸の唐突でありながら象徴的な終わり方が絶妙の余韻を残します。これぞ日本の感性!。ちなみに田中が作る「蕎麦掻」がおいしそうで食べて見たくて鮮烈に印象に残ってしまい後に「蕎麦掻」食べる度この作品思い出すようになった・・。

(評価:★5)

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