コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] ビヨンド・サイレンス(1996/独)

聾唖の両親の元で育ったという設定が、話題性だけに終わっていないのは良かったのですが、やはりエピソードを詰め込み過ぎて、一つ一つが浅く散漫な印象。少女時代だけに執着して描いても良かったのでは?
TOBBY

聾唖の両親の元で育った少女が、演奏家を目指すのはドラマティックな設定ではある。別に医者でも画家でも何でも良かったわけだし。それを、わざわざ演奏家にしたのは、音楽の世界を理解できない(コンプレックスを持っている)父との確執を描きたかったのだろうけれど、その親子の確執は描き切れていなかった。ただ、父親の傲慢に振舞ってしまう態度は道義的には絶対無しだけれど、ハンディと向き合いながら生きている状況で子供に反抗されてしまったら、そうなるのかもしれないな…と丸ごと否定できないリアルさはあった。また次々繰り出されるエピソードと月日がスピーディーに過ぎ去り、観客は感情移入が大変なのも事実。結果、焦点が曖昧になり核がボヤけてしまった。

個人的に心を鷲掴みにされなかった理由の一つに、本作鑑賞以前に見たドキュメンタリー番組の影響もある。それは本作と同じ聾唖である両親の元で育った少女を追った番組だった。彼女は両親と音の少ない世界に暮らしている。やがて幼稚園に入園し、大勢の子供たちと過ごす事により、初めて接する大きな音による驚きと、戸惑いの日々。圧倒されて彼女はクラスメイトの輪にすら入って行けない。そのうち慣れてくると家の外で多くの体験をし、両親に伝えたい様々な感動の思いが生まれる。けれど少女の手話では限界があり、想いを伝えられないもどかしさと、苛立ちの日々…。娘の思いを100%理解してやれない両親の切なさ…。この番組を見て自分が当たり前のように過ごした家族との幼少期の日々が、いかに恵まれていたかを痛感し、バットで殴られたような衝撃を受けたものです。この日本のドキュメント番組はとても丁寧な視点で創られていた。

故に、それと見比べてしまうと、ど〜も本作は絵空事めいて感じてしまった。ただ創り手の真剣さや情熱は伝わるし、構成や脚本次第で良くなる可能性が見えたので★3つ。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。