「聞きたいけど，聞けばいやな思いをする可能性があるなら，いっそ聞かないほうが良い．そして気付かないふりをして忘れてしまおう．」　こういう考えは，20歳を超えた大人なら遅かれ早かれ誰もが持つようになるものなんだろうけど，この映画の主人公は，さらに，相手を気遣うような嘘をつく．　この映画を初めてみた20歳過ぎの頃は，この主人公の行動がすごく大人に思えた気がする．そして，なんて切ないんだろうって．

濃厚に描きすぎていない人間関係とアルメンドロスの美しい白黒映像があいまって，すごくストイックな印象を受ける．物語も非常に面白い．この映画で僕の好きなところは，モード家での一夜の人間模様と主人公の行動．すごく微妙なバランスを保っていて面白い．そしてモードやフランソワを演じる女性が綺麗っていうのも，この映画では重要だと思う．

それにしても，ロメールは男心のせつなく弱い部分を突いてくる．