けにろんさんのコメント: 更新順
蜘蛛女(1994/米) | ハードボイルドの意匠を完璧に纏った世界にファムファタールも真っ青な怪物女を降臨させた傑作脚本。オリンもオールドマンも最善の配役。なのに惜しいまでの薄味感。メダック演出が手堅くそつがないだけで狂気な狂熱に欠けるからだろう。 | [投票(1)] | |
ぐるりのこと。(2008/日) | 2人を取り巻く世界が厳然として存在しつつ淡々と流れていく。偽悪的に夫婦の有様のキツい面を抽出した展開も世界に補完され至福に至る。宗教的なまでの達観。ただ多くの実事件の素描は精緻な相関には遠い。リリー・フランキーが男の全き理想型を体現。 | [投票(5)] | |
秋日和(1960/日) | 『晩春』から10年の歳月を経て一巡した原節子の役回りが物語構造と同期した侘びしさが胸を打つ。3人組サラリーマン親爺のコンビネーションと岡田茉莉子の艶も完璧な配合度合いだが、結局笠の枯淡世界へと回帰する小津の終着点で集大成。 | [投票(3)] | |
インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国(2008/米) | 正直、懐旧の想いより爺いの冷や水的一抹の寂寥が拭いがたく、又冒頭からの見せ場も場当たり的で乗れない。中盤以降の釣瓶打ちは流石とも思うが、行き着けばナスカに宇宙人と出し殻材料。新味無き『聖櫃』なSFXで処理されたそれが又粗くて白けるのだ。 | [投票(7)] | |
酒とバラの日々(1962/米) | ジャンル映画としての前フリに過ぎぬ前半3分の1が矢張り甘い。しかし、後半急速に締まる。付かず離れず墜ちていく2人。だが、サイコパスな展開を避け死での決別もない予想外な終結と余韻。オーバーアクトのレモンに対し押さえたレミックが良い。 | [投票] | |
スピード・レーサー(2008/米) | バッタのように跳ねたり垂直の崖を登ったりする世界にリアリズムなんざ有り得ないしキッチュなしたり顔されても小うるさい。ウォシャウスキー兄弟はど真ん中からダサ正確に射抜いたと思う。チンパンの芸もタツノコ的ミューズなリッチもただただ良い。 | [投票(3)] | |
日本の夜と霧(1960/日) | 反体制闘争を描くに製作も制約を逆手に取った体制打破気分を横溢させるいう前代未聞の戦略。大島の空気を読む山師才能が全開。2世代の闘争の総括が呈示されたとも思えぬが吉沢京夫の空疎なアジテーションは或る意味50年後を予見していたかもだ。 | [投票(2)] | |
告発のとき(2007/米) | 真摯に語らねばならぬことに対してのハギス演出が、贅肉ゼロのドラマトゥルギーを潔癖なまでの簡潔さで描く。父はやり場のない憤りを噛み殺して逆さ星条旗に思いを託すしかない。ワンサイドな視座から遙か離れた錯綜した思いと鎮魂。役者も皆完璧。 | [投票(5)] | |
119(1994/日) | 閉塞的日常を描くに何も起こらないという設定は在り来たり。それを高度に突き詰めていけば何かに到達するのかも知れないがそこまでの覚悟も無い。設定からしてあざとさが匂い立つ微温ワールドの独善は思い上がりと紙一重だ。 | [投票(1)] | |
アフタースクール(2008/日) | 何がどうなるか行く先不明のグルーヴ感。ただ前半にあった曲がりなりにもの不穏な空気はやがてマニュアル的に滅菌されていく。又、唐突の誹りを免れない佐々木と大泉の確執は書き込み不足か。何かと詰めが甘いが撮影始め特筆点も多い。 | [投票(4)] | |
迷走地図(1983/日) | 派閥抗争を形成する金や人脈やカリスマな扇動力や更には人知不可侵の力学やそれを司る闇は所詮伺い知れず平明なスキャンダルに収斂してしまう。過度な期待は端から持っちゃいないが、やっぱり物足りない。闊達な演出で退屈はしないけど。 | [投票(1)] | |
ブレイキング・ニュース(2004/香港=中国) | 紛れもなく図抜けた冒頭の数分で沸点に達した期待は、世間体を気にしまくるふやけた連中の生ぬるいドタバタに急速冷却されていく。ジョニー・トーは少人数の段取り芝居は制御出来ても集団に対しては全く力が及ばないことがはっきりした。もうええわ。 | [投票] | |
鰯雲(1958/日) | 様々な悲喜交々があったが結局それでも時は流れていき我々も生きていくしかないという諦観で『流れる』と同工異曲。ただ田中澄江的情念は橋本忍の無骨な構築力では代替不可だし東宝専属役者だけでは矢張り駒不足感が否めない。 | [投票(3)] | |
イースタン・プロミス(2007/英=カナダ=米) | ナオミ・ワッツの困惑ではないが、実際あんた、どっち行きたいねんと思える半端な終幕に唖然ともした。が、にしても、このドップリとロンドンのマイナーコミューンに浸りきったクローネンバーグの描写の数々。その深みとコクには降参するしかない。 | [投票(10)] | |
戦場のメリークリスマス(1983/英=日) | 崇高で毅然とした魂の相克を描くに同性愛への越境はいいとして、ならばビジュアル男優の配置は余りに芸が無い。ボウイと坂本には正味うんざり。庶民的たけしが良いだけに尚際立つ。大島らしからぬ巨視観の一方で又らしからぬ茫洋感の混在。 | [投票(1)] | |
シスターズ(2006/米) | 窓から垣間見える惨劇の成る程な『サイコ』展開に遠くヒッチの残影を感じて某かの感銘は感じたが、それは結局デ・パルマに捧ぐべきものなのだった。エッジの効いたキャンベル撮影は特にビデオ使いの今風味が良。水準作。 | [投票(1)] | |
Love Letter(1995/日) | 地に足つかない少女文学的設定がむず痒いまでに居心地悪くもあるが、過去と現在を往還する物語が何時しか現世と黄泉の連結させるトリッキーな作劇の妙。篠田撮影のロングとミディアムの中間狙いが醸す実存主義的世界観。意外に堅実な演技陣も魅せる。 | [投票] | |
ジェシー・ジェームズの暗殺(2007/米) | 冗長とも言えるが敢えてアンゲロプロスのようだと言ってみれば深淵にも思えてくる。少なくともリアクションではなく場の空気を描こうとしたのは間違いない。それが成功したシーンは心底堪らないが、でないシーンは結構睡魔に襲われる。 | [投票(4)] | |
俺っちのウエディング(1983/日) | 散文的な丸山の資質が冷徹でも炎を秘めた根岸演出と融合し日本映画としては希な本質で欧米的なライトコメディを現出させた。C調な時任・宮崎を配し尚刻印された青春は叙情性無くモラトリアムな混迷がある。前田撮影も燻銀な光沢。 | [投票(1)] | |
鬼輪番(1974/日) | ヤケに扇情的な出だしがB級度満開の期待を煽るが、その後平易且つ淡泊に物語はサクサクすすみつまらない…と思いきや火山口シークェンスの妙に執拗なまでの間延び感が無意味で魅せる。カタルシスの欠片もないのが寧ろ潔い。 | [投票] |