[コメント] バイオレント・サタデー(1983/米)
「一度テレビドラマの演出を手がけてみたかったんです。スパイと殺しの絡んだね」
映画らしからぬ雰囲気の曲が始まり、テレビモニターの画面が映る。ストーリーが進んでも、「映画」らしさの文法が、一向に、微塵も表れない。「これは、もしかして、テレビドラマの演出を、ペキンパーが確信犯的に踏襲しているのかな・・・?」と、ふと思う。そう考えて観ていると、カット割の仕方も、音楽の入れ方も、何もかもが、「頑張っててまあ結構出来がいいじゃんこのテレビドラマ」だ。
その仮説の裏付けのように、画面の中に執拗に表れる、ゲップが出るほど溢れかえる、テレビのモニター、モニター、モニター!
テレビビデオで騙される主人公と犯人。テレビ番組とビデオによって暴かれる陰謀。常にモニターによって覗かれている全ての登場人物。しかも何故か隠し撮りのはずなのに、手間暇かけて、「ドラマ」のように細かーくカット割がしてある(大笑)。お得意のアクションシーンは、しらけたように、犯人によって、メジャーリーグの「テレビ」中継といっしょに「観戦」される。
そして確信。ジョンハートが言う。「一度テレビドラマの演出を手がけてみたかったんです。スパイと殺しの絡んだね」
ああ、やっぱり?やっぱりそうなんだよね?『ワイルドバンチ』によって、西部劇映画の息の根を止めたと言われているペキンパーは、この遺作で、当時映画を追い落としたテレビ界とその視聴者に最後っ屁?
その屁が相手には届いていない所も、「敗者の美学」の彼にふさわしいと思います。
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