[コメント] スカイ・クロラ(2008/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
宮崎駿は永遠の子供だ。今回の押井守は、自らの作風を若返えらせようとして意図的に「未熟さ」を容認した印象がある。しかしそれは年配の創作者が陥りがちな大いなる勘違いであり、はっきり言って怠慢だと思う。
昨今の深夜アニメ帯には、若者たちの手による、正直5分と見ていられない「押井っぽい」作品があふれかえっている。そんなみんなのアコガレの「押井風」ジャパニメーションを、超高度なテクニックを駆使して、噛み砕いて実際に作ってみましたセルフパロ。
しかし。
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ラスト近くの、ヒロインの変てこりんなちょこちょこ歩き。
斜めに切ったのか?と見えるような立体感のないパースのおかしいパイと、書割のようなマグカップ(ドラッグアンドドロップしたらそのままスライドしそうだ)。
ヘッドライトに照らされた影の原理がおかしくて、地面と建造物の立体感がなくなった背景。
ねっころがってひざを抱えた人間をうしろから捉えると消える尻。
しゃがんでいる人間を正面から捉えているはずなのに、まるっきりデッサンがおかしいおかげで、まるで「床から直接生えているよう」に見える両腿。
その彼女が立ち上がるとき、腰が描けないせいで上着で隠してごまかすアニメート。
さらにぬるいエピソードを羅列する甘い脚本、素人声の演技力の無さ。
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押井監督は『崖の上のポニョ』をして、「老人の妄想」と言ったけれど、クリエイターとして、年寄りには年寄りの、新鮮さを削ぐ自分のキャリアや、かえってだんだんと邪魔になる創作能力の高さ、と言う向かい風にドンと胸を張り、「無様さをさらして生きる」と言う責任がある。その責任をポニョと言う作品はきちんと果たしていると思う。作品のよしあし、売れる売れない以前の問題だ。
どこのどいつにたぶらかされたのか、世界のオシイは、前作『イノセンス』を「売れなかった作品」とカテゴライズした。そこで彼は今回作品作りに対するアプローチをまったく変えてしまった。彼は精一杯誠実なつもりだろうが、私はそれは正直責任回避だと思う。作品の出来不出来以前の問題だ。
新海誠のような作画力。いまだに『人狼』ショックから抜け出せないらしいキスシーンの演出。
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若返るな、と言っているわけではない。いつまでも立ち喰いモノだけをやり続けろと願っているわけでもない。しかし、精一杯やって未熟な作品を良しとしてすりより、自分まで下手くそにする年寄り、今までと本来の自分の立ち位置を否定する年寄りは、やはりそれは完全な怠慢だ。
手塚治虫は、黒澤明は、ボロボロになりながら、一度として小手先に逃げようなんてしなかった。
会社の上の金を出すどこのどいつ野郎に、なんと言われようとも、
闘って欲しいんだよ。
いつまでも。
言うほどかんたんじゃないかもしれないけど、自分を否定してはいけないんだ。
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戦線から遠退くと楽観主義が現実に取って代る。 そして最高意志決定の場では、現実なるものはしばしば存在しない。 戦争に負けている時は特にそうだ
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どこのどいつ野郎は、どうやら『イノセンス』の「欠点」を、
一つ一つあげつらい、
そのリストの一つずつに「横線」を引いていけば、
「傑作」「売れる作品」が出来ると思ったらしい。
…この(以下自粛)
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「イノセンス」欠点リスト BY最高意志決定の場(「クカイ・クロラ」製作時のためのチェックボックスもつけてみました)
□1:主人公が若くない
□2:声優が有名人じゃない
□3:だらだらした意味不明(と、理解を放棄した人間には聞こえる)セリフが多い
□4:短い時間に詰め込みすぎ
□5:エンディングで、流行りのアーティストがテーマソングを歌っていない
□6:監督が脚本を書いてしまっている。彼には映像の才能はあるが、作劇の才能はない
□7:流行りの人気作品が原作じゃない
□8:絵がリアルすぎて地味
□9:DVDソフト付属のブックレットに、監督でも脚本家でもないプロデューサーとやらが出てきて、「このシーンはこうこうこういう意味があるのです」と、最初のシーンから最後のシーンまで、何ページにも亘って手取り足取り逐一解説をしてくれていない
□10:(薄っぺらい)ヒット映画を作った監督のアドバイスが入っていない
□11:(形而下的な)恋愛要素が薄く、(形而下的な)ラブシーンが皆無
□12:イシカワかっこ良すぎ
□13:以下略
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前置きはここまでにして。
いっしょに観ていた友人が、「あの基地には"女"は一人しかいないのではないか」と言い始めました。
ヒロインの娘→パイロット→(かつてパイロットだった)ヒロイン→メカニック
と言う、同一人物の一つの人生の、さまざまな年代なのではないかと言うのです。顔も良く似ている、と。
娼婦たちや、食堂の女性は、基地の外の人間なので無関係。
おもしろい考え方だなあ、と思ったので、ここに記します。
そしてその彼女の発想に☆+1。
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