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[コメント] 叫びとささやき(1972/スウェーデン)

「模様」と言うのは、人工的に「自然」を模して(←文字どおりですね)いるものなのですね。全ての「模様」が排除された徹底的な「無地」の世界はひどく異様。
uyo

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







私には女姉妹はいません。かつて友人に、四人姉妹の長女がいました。ある日私が「四人姉妹なんて、『若草物語』みたいだねえ」と言ったらば、その途端、とても聡明で、人柄も温厚な彼女が、顔を顰めて「へっ」とか、「はっ」とか吐き捨てるようにした事がいまも忘れられません(笑)。その時ワタシは、女姉妹の暗黒を見た(笑)。

でも出会ったことがない訳ではない。「淋しいの、つらいの」と、言いながら、こちらが手を差し伸べようとすると更に痛がり、「私に触らないで!」と叫ぶ長女のような自家中毒の女性の前で、途方に暮れた事。せまーい人間関係の中で、常に自分が誰からも愛される事を望み、その優位を保つミニマムなパワーゲームにエネルギーを費やす三女のような女性の前で、「好きにすればいいがな」と、さじを投げた事。もちろん自分にも、似たような何らかの要素はあるでしょう。

とりたてての人生の不自由(食べる事、着る事、寝る事)がないが「ゆえ」の、逃れられない苦悩。全てを手にしている、と言うぬるま湯から出る事が出来ない死ぬほどの苦痛。反して、全てを喪失して行く次女だけに許された幸せの瞬間。しかしそれは、生きて行く人間にとっては、真実の理想とは言えない。ラストシーン、次女以外の人間のアップは映らない。彼女は彼女の世界だけで完結して去って行く。

こちらのコメントやあらすじで、映像の赤は「人間の血の色」「網膜を流れる血」と書かれてありましたが、私には、どうしても経血に見えて仕方がありません。(男の方お許し下さい)腰まで血の海につかり、それでも進んで行くのですね。

(評価:★5)

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