ただひたすら逃げまくるだけだった。回想録書いたシュピルマン本人は勇気あるな。こんなに情けない自分をさらけ出して。 何の抵抗もせず逃げ回る姿に却ってリアリティを感じるが、映画的興味から言えば起伏の少ないストーリーには少々つらいものがある。

体験者でもあるポランスキー監督だが、ストレートな反戦やナチスへのプロバガンダというより、年月を経て達観したのか、終末感漂う黙示録のよう。市街戦は引いた画だし、残虐な殺害シーンがあってもシュピルマンの家族の安否（当然虐殺されたのだろうが）が省かれたように、見る側に安易な感情移入をさせないところはさすが。 ドイツ将校との、ピアノを交えた一期一会でさえも、後に捕虜となった将校の身も蓋もない哀願ぶりで台無しに（助けてもらったシュピルマンも恩返しできず）。戦争に「いい話」もクソも無いはずなのに、感動ドラマを求めてしまった自分は肩すかしされてしまった。

カンヌやアカデミーで脚光浴び、皮肉にもイラク戦争勃発でますます価値を上げたけど、実は少々趣を異にする映画じゃなかろうか。時期が時期だけに、この反戦の機運の中、何もできず無力感といらだちの中にいる自分には、かなりの温度差があって楽しめなかったのが本音。