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[コメント] プロミス(2001/米)

子どもたちの視線は澄んでいる。子どもながらのハスっぱなところや背伸びしたところも見える。ぼくはドキドキしながら視ていた。… これは子どもたちにこそ是非視て欲しい映画だ。
死ぬまでシネマ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







映画が進むに従い(まさかこの先、こういう展開になるんじゃ)と心配になった。しかしパレスチナ難民を封じ込める<壁>と<検問所>は余りに非情かつ強固なので、<映画>のように都合良くは行くまい、無理だろうとも思った。

そうしたら本当に双子とファラジが対面した。ぼくはドキドキした。大丈夫なのか、大丈夫なのか、と…。

    ◆    ◆    ◆

余りにも大きい断絶が齎す幼な心への<毒>。碧眼の<アラブ人の子>マハムードと浅黒い肌を持ったイスラエル人の子シュロモが敵意を込めた言葉を吐く。字幕を逆につけた方がぼくらの「常識」に近い。子ども故に憎しみの形は<原型>を見せ、その業罪の核心を突きつける。

多くの事を語った映画だった。あれからどういう気持ちでファラジは難民キャンプから双子に電話をしたのだろうか。双子はファラジとどのように電話で話し、自分から電話しない事にどのような痛みを感じただろうか。涙を流しながらファラジは言った。「BZが帰ってしまえば、ぼくらはこの事を忘れてしまう…」この場面ではぼくも泣かずにはいられなかった。

登場した子どもたちの中では一番軟弱な印象を感じさせたイスラエル中流家庭の<双子>、ヤルコとダニエル。しかし彼らこそが一番リベラルであり、彼らだから境界を越えられた事実。そしてその後目を伏せてしまった弱さ。目の前にいるパレスチナの少年に話しかける事も無く、偏見に隠れる<超正統派>の少年シュロモ。話し合いは子供ではなく30歳以上の大人や政治家に任せよう、と言う少年モイセ。「それが政治家の仕事でしょう…?」

イスラエルにおける<超正統派>は実際のところ一割〜二割しかおらず、残りの一般市民は彼らに「怯え」ながら暮らしているのだ、と監督は語った。日本にも似た風景があったし、それは未だに尾を引いている、とぼくは思った。

この映画が世界を巡っている時、第二次インティファーダが起きていた。

今年(2008年)1月23日にガザの<分離壁>が爆破され、大量のひとびとがエジプトとの間を行き来した事は記憶に新しい。「ハンガリー国境」の再現かと期待したひとも多かったと思う。2月3日には再封鎖されたようだが当初エジプト治安部隊は開放を放置していた。余りに理不尽で余りに非人道的だからだ。一刻も早く答えが欲しい。

    ◆    ◆    ◆

嘗て満州で、朝鮮半島で、少年たちは見ていた。自分の国が占領した土地の少年たちを。自分の父や母、大人たちが彼らにどういう態度を取り、どんな言葉を吐きかけたかを。そして言葉の通じない彼らも向こうからぼくらを見ていた。

ぼくはこの映画を視ながら、70年前の満州と朝鮮を見ていた。

(評価:★5)

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