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[コメント] 初恋(2006/日)

時代と恋の切なさを表現しようと挑戦した意欲作。惜しいところまでは行ったと思う。3.8点。
死ぬまでシネマ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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宮崎 将を始め「B」に集まる青年たちは皆いい演技をしているし、よくもそれらしいのを集めてきたなぁと思える。宮崎あおいもいい演技をしているが、…しかし演技を超えたものにまでは到達していないような気がする。特にあの時代を描くなら、いやどの時代を描くにしてもそうなのかも知れないが「何かに取り憑かれないと駄目」な気がする。

宮崎あおいの「初恋」は悟り過ぎかも知れない。予定調和な演技だから運命の儚さが薄らぐ。最後に岸の方の「一目惚れ」が明かされるが、みすずの方はどうだったのか。お互いが一目惚れだった、というのでも良いが、ぼくとしてはみすずは知ってゆく中で次第に岸に惹かれていったのだと思いたい。時間的な制約もあるだろうが、「B」のメンバーの中で次第に岸の存在が大きくなってゆく様をもう少し繊細に描いて欲しかった。

監督の側からはもう少し時代を切り取るカットの挿入によって彼らをフォローして欲しかった。「時代のノスタルジーにしたくなかった」との事だが、ではこの作品は一体誰に見せようとして創られたのだろう、と思われてならない。確かにいい出来ではあるが、最早三億円事件自体を知らないものが大多数の世代が演じ、見せることの意味は何なのか。何処にでもある「初恋」を描くことが目的だったのだとは言って欲しくない。だからこそ、時代を鋭く切り取らなければならないのではないだろうか。

どうすればいいのかはぼくにも判らないが、またこの作品がみすずの一人称で語られることも難しいところだが、しかしリョウと岸が商売女の宿で夜を明かした場面など、みすずの一人称は崩されている。みすずが高校で同級生と話す、或る者はノンポリで或る者は主義者かぶれで、しかしみすずは彼らとは意見/世界が合わない。「実行」の朝、みすずが家から新宿に停めた車まで行く、その歩き、電車内、…とか、そうした中で何か表現出来たと思う。例によって予算の制約はあるにしても。

追記) 喫茶店の壁掛けモニターに元ちとせの歌う主題歌「青のレクイエム」のプロモーション映像が流れた(『初恋』からも映像が引用されている)。ぼくの目からは不覚にも大粒の涙が溢れ出ていた。この主題歌との出逢いはこの映画最高の出来事だろう。この時代を描き、この主題歌に出逢えたこの映画はぼくの中で忘れられない1本になった。(+0.1点加点)

(評価:★3)

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