ミッキー=ロークの演技は泣かせるのだが「零落しても誇りは捨てない漢」というのは実は本当の零落ではない訳で、誇りを捨てないで生きている時点でしっかり踏み留まっているのだからこれは親爺の願望であり夢想である。

親爺の妄想で口説こうとした踊り子のオバちゃんが、一寸その気になってしまうのも妄想。最後ボロボロの体に泣きすがるのを「すまねぇが止めてくれるな」と振りほどきラムジャムするのはこれはもう、「あしたのジョー」というか「チャンピオン」というか、妄想でしょう。

それよりも一番の大妄想は、勿論あの超色白の美人ひとり娘。人でなしの親父が突然まとわりついて来ても受け入れてくれて海辺を散歩してくれたりするのは、これは大妄想大噴火である。

親爺として男として脳内現実化は嬉しい反面、これだとどうにもロークの名演に素直になれないので減点になってしまうのである。