コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 劔岳 点の記(2008/日)

美しき山々の映画。原作者=新田次郎へ献辞がなされているが、映画界から神々の山嶺へ(ちっぽけな人間達から大自然へ)捧げられた映画に見えた。☆3.8点。
死ぬまでシネマ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ドローンを使った空撮等の姑息な手段が無いのが良い(無かった、よね?)。マップでのルート解説も無い。地図を作る映画だから無いのだ。

もう少し登場人物に厳しい顔を持たせ峻厳な現実を克明に描き上げれば、山岳映画の極北に到達出来たと思うのだが、そうしなかったのは木村大作監督の人柄なのだろう。厳しい映画であり乍らとてつもなく優しい映画になっている。

21世紀の最強妻(最恐でない)こそは宮崎あおい。それ故都合よくピンポイントに配置されがちなのだがしかし、この映画で浅野忠信の妻に置いたのはミスキャスト以外の何者でもない。宮沢りえでも鈴木砂羽でも良かったのに彼女を置いてしまう辺り、矢張り木村監督の「兎に角山一本」の集中力を感じる。

この物語、陸軍測量隊も山岳会も登頂に成功し帰還しているから良いものの、構造としては『八甲田山』と全く同じ。勿論、専門家が考えた挙句のアタックなのだから同じでは無いのだろうが、その可否が判らない門外漢からすると、「人間って都合がいいナ」とも思う。「八甲田山」は人間の愚かさで多数の犠牲者を出した暴挙だったが、映画『八甲田山』での経験のお蔭で本作もこの世に生まれたのだと思うと、だから良いとは言わないが、過去の経験を無駄にしない事は大切だなぁと思う。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。