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[コメント] グリーン・ゾーン(2010/米)

大量破壊兵器(WMD)の有無、というイラク戦争最大の禁忌事項。関心を持たずにはいられないが、到底エンターテイメントにはなり得ない(身も蓋もない)題材である。それをここまでした腕力を讃えたい。特に破壊された市街の描写は飛び抜けている。☆3.9点。
死ぬまでシネマ

WMDをイラクが開発・隠匿している、というのが2003年のイラク戦争開戦の最大の大義だった。アメリカ合州国は国連決議に基づいて、としたが、実際には国連も諸国も開戦には消極的・批判的だった。UNMOVIC(国連監視検証査察委員会)のブリスク委員長も、IAEA(国際原子力機関)のエルバラダイ事務局長も、査察の継続で問題は解決すると確信していたのに、結局9.11後の国内世論を頼みにしてブッシュは開戦に踏み切った。平和の為に最後の最後まで踏ん張り続けていた現地の職員たちは、どれ程辛かっただろうか。

こんな事は明らかに異常だった。これでWMDが出てこなかったらどうなるのかと思ったが、何と恐ろしい事に、それは最後まで出てこなかった。そしてアメリカ合州国はICJ/ICC(国際司法裁判所)に訴追される事はなかった(少なくとも2010年5月現在までは)。「始まってしまえばこっちのモノ」というブッシュ政権の思惑は正しかった。(しかし或る意味では正しくない、というのがこの映画の最後のシーンでの告発である)

開戦直後、いち早く全世界に「米国による武力行使の開始を理解し、支持する」とアメリカ支持を完全表明したのは、日本の小泉純一郎首相であった。そしてその後WMDの存在が疑わしくなっても言い逃れを続け、最後には「大量破壊兵器があると想定するのはあの当時不思議ではない」とケツを捲った。小泉首相は戦後3番目の長期政権を誇り、自民が野党に転ずるとみるやさっさと引退したが、現在も日本国民の多くは彼を好意的に見ていると言われる。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)Orpheus 甘崎庵[*]

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