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[コメント] 終戦のエンペラー(2012/日=米)

当然虚構である訳で、それを新たな神話として(マジに)受け取る層がある事に驚く。☆3.6点。
死ぬまでシネマ

E.=ズウィック監督の『ラストサムライ』を観た時、多くの日本人は喜びつつも違和感を拭えなかっただろう。ソクーロフの『太陽』も同様で、天皇はあんなではなかっただろうし、作品も現実をリアルに描く事を目的としていなかった筈だ。これらは物語であり、それを物語る事の意図・意味が大切だと思う。

今作『終戦のエンペラー』では戦争責任、もっと言うなら「天皇の戦争責任」を巡って日本人とアメリカ人(欧米)の物語が語られる。それは決して敗戦当時の実情を描いているのではない。

私の母が観賞後に「でもやっぱり、最後のシーンでは泣けたわ」と言ったので耳を疑った。あのシーンのどこに涙したというのか。(妄執でなく)戦後を実際に生きてきた人間の言葉とは思えなかったが、ひとの記憶は失われ物語だけが残る、という点ではそうなのかも知れない。だが、この映画はひとびとの精神をそうした物語に収斂させる意図があるのではないと信じたい。(記憶は失われ物語だけが残る、というのは人間の避けられない流れだとは思うものの、そこには数多くの想い(生命)を消し去り、無かった事にするという非道が含まれるからだ。)

天皇との会談直前になって、マッカーサー(リー=ジョーンズ)が「ひとが神にどう会えばいいんだよ」とソワソワしだすのが面白かった。

(評価:★3)

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