[コメント] アメリカン・スナイパー(2014/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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ナム太郎さんはいつもの東林作品ではないと思ったそうだが、私にはいつも通りの東林監督作品に思われた。
東林監督が戦争を描く時、それは「大義に殉じた漢」への敬意と共感が常に屋台骨になっている。共感というのは、勿論兵士だった自分への自己肯定(良く言えば自尊心)から来ている。だから敵であっても日本人を差別的に描きたくなかったし、登場人物に汚点を残したくない。
しかし、理想的な英雄を描けば彼らを描いた事にはならない。彼らの苦悩や矛盾をも描く事が、真に彼らを賞賛する事になる。と、思っている(と俺は感じる)。
そこでいつもの様に映画は薄ぼんやりとしてくるのだ。ライバル狙撃手を持ち出したりとか、変な色気を出してみてはいるが、根本的な部分が変わらないので益々中途半端感が増すという所もいつも通り。
クリス=カイルの死は、確かに映画を或る程度は修正させたのだろうが、それは彼が生きていれば反論出来る余地を残せなくなっただけで、基本的な方向性は既に東林監督の中にあった様に俺には思われる。
東林監督は将棋の駒にされる自分たち兵士の苦しみを皆に知ってほしいと思っている。と同時に、誇りを持った個人が(国家に殉じるという)義務を果たす姿を示したいと思っている。キレイに見せようとする配慮が映画を薄ぼんやりにして行く。
突然看護士に切れだしたり自分の犬を絞め殺そうとする主人公を観て、「こりゃ全然違うな」と感じた。あれでは描いた事にならんだろう。遺族はこの映画が出来た事で胸を張れるのだろう。正しい姿を皆に理解して貰えると喜んでいるのだろう。違うだろう、犬を絞め殺す男は、ああじゃない。奥さんはその時、気が狂った夫を見て自分も半狂乱で泣き叫んだ筈だ。
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