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[コメント] ラスト・ナイツ(2015/米)

海外のスタッフにチェコでのロケ、主演にクライヴ=オーウェンを得たら、紀里谷和明でも中々佳い画が撮れた。しかし今作も日本人が好きな「忠臣蔵」とは程遠い。☆3.6点。
死ぬまでシネマ

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47 RONIN』('13)を見て「俺ならもっとやれる」と思ったのではないか。確かにこっちの方がプロット(物語構造)をちゃんと理解していると思う。仇を討たなくてはならない。しかしそれには雌伏の期間が必要だ。真田広之が、クリスチャン=ベールか黒田官兵衛(岡田准一)みたいに井戸に落ちてたら×年経ってましたでは困るのである。

モーガン=フリーマンが如何に賢君であったのか、如何に騎士団と結びつきが強かったのか、という事ではなくて、如何に幕府が赤穂藩の面目を潰したか、如何に侍達が自らの道を貫けるかが問題なのだ。まぁ、それはまさに日本人の「問題」なのだが。若輩の内匠頭と老獪な上野介という構造の改変、内匠頭の介錯で主従を表現しようとする点からして、2作品とも組織内事件という現実的視点はすっかり諦めている(寧ろ『47 RONIN』での当該シーンを焼き直ししたかった(<俺ならもっとやれる>)という意図が観て取れる)。

幕府という巨大な機構、将軍という諸藩の頂点に立つ存在、内蔵助の中間管理職的な立場(筆頭家老ではあるものの執行役員というよりは担当部長のイメージ)が、忠臣蔵には重要不可欠な要素となる。吉良家は家格は浅野より上ではあろうが、所詮は政権下部組織の意地の張り合いなのである。将軍(この映画で言えば皇帝)にとってみれば部下の争い、民の動向だけが気になる頭の痛い厄介事なのである。その辺を汲んだ上での盛上げは、西洋人に見せる映画では表現不能であろう。

(評価:★3)

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