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[コメント] マイ・サンシャイン(2017/仏=ベルギー)

どこぞで粗筋を読んで『フロリダ・プロジェクト』('17)に似てるなと思ったが…、☆3.7点。
死ぬまでシネマ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







蓋を開けて見たら寧ろ『デトロイト』('17)だった。

デトロイト』は1967年7月のデトロイト暴動に巻き込まれた人々の恐怖体験を描いているが、本作で描かれるのは1992年4月に起きたロサンゼルス暴動である。暴動へ突き進む気配の中、翻弄される黒人女性と「家族」の物語である。

フロリダ・プロジェクト』は現代の格差社会の中で救済から溢れ落ちてゆく母娘を描写した秀作であるが、『フロリダ』や『デトロイト』と比べて本作は些かリアリティに欠ける。『フロリダ』では一部で幻想的であったり鳥瞰的な所があったが、本作は専ら主観的である。行き場の無い子供達を家計を度外視して匿って「家族」にしてしまう女性ミリー(ハル=ベリー/同名の実在モデルあり)とその「長男」ジェシー(ラマー=ジョンソン)、2人の主観的世界を中心に物語は進んでゆく。

主人公のミリーや家族たちは驚くほど純粋無垢だ。人間が恐れるべく恐れ、驚くべく驚き、好奇心も旺盛。純粋過ぎて愚かな処もあるが、思いやるべきところではしっかり優しい。しかし当時の殺伐とした雰囲気に思いを巡らすと、子供達の無邪気さもやり過ぎで、違和感があった。

行きがかり上彼等に救いの手を差し伸べる事になる隣人オビー(ダニエル=クレイグ)も、気難しくキレ易いのに差別感情は一切無く、人間として相手を見る事が出来る人物。『フロリダ』ではウィレム=デフォー演じる雇われ管理人ボビーの立ち位置なのだが、ボビーが感じるような苛立ちや無力感は表に出てこない。

差別や憎しみが吹き荒れる街で、自分の不幸や苛立ちを、そうした社会の差別感情と(決して)結びつける事のない登場人物達に、私は強い驚きを感じた。しかし、これは懐かしいものだ。これがこの映画のもの足りなさにも通じているとは思うのだが、嘗て私が尊敬した人々、感動した作品の中で提示されていたものでもあったのではないか。

この映画の中で最もリアリティを感じた瞬間は、スーパーの略奪を止めに来た警官がミリーとオビーに銃を向ける所。混乱した現場で警官も自分の判断に自信を持てない。丸腰の相手に自分の立場を大声で叫ぶ。ミリーは怯え、オビーは静かに待つ。

これから日本もまだまだ格差あり差別あり憎しみありの社会が続く。自分が目指すべき人物像とは何か、色々考えながら観る久々の映画となった。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)けにろん[*]

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