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[コメント] NAGASAKI 1945 アンゼラスの鐘(2005/日)

医師である主人公を通して、原爆投下・被爆の実態とその後の人々を襲った地獄を描く事に成功している。予想を超えた秀作であった。是非多くのひとに観て欲しい。
死ぬまでシネマ

監督の有原曰く「広島原爆を扱った『つるにのって』は低学年向けにソフトに創られた。今回は中高生を対象に、長篇に挑んだ」との事。

たった一発で、都市が完全に壊滅した事。建物一つではなく都市の圧倒的<消滅>、被爆者たちが被爆直後から生き延びる為に闘わなければならなかった事、国家が敗戦した後も尚、次々に民間人が殺戮兵器のために死んでいった事、健康に見えた者・必死に救った筈の者たちが死に、医師の目の前でひとつの家族が消えてなくなる事…。原爆が何故「悪魔の兵器」といわれるのか、何故人類と共存できない兵器といわれるのかを描く事に、このアニメーション映画は成功している。

原爆映画に於いては、映画の中では生き残った多くの登場人物も、その十年後、二十年後には死んでいるのだと思うと、悪寒がしてくる。原作者の秋月は喘息発作による低酸素脳症から昏睡状態となり、その後天寿といってよい長寿を全うしたが、しかし彼とて被爆直後には急性放射線障害に襲われ、死者の群れの中でその後もずっと恐怖にさいなまれた人生だった筈だ。『父と暮らせば』で美津江たち被爆者が「幽霊」のようになってしまったのは2つの意味があるのである。

私も唸った被爆とその後の描写を、ある老被爆者は「こんなモンじゃない」と評したという。それに対する秋月すが子さん(原作者の妻)の言葉「けれどもこれ以上のことを、動く画として見る事は耐え難いことと思います。気持ちは充分伝えられることと存じます。」に、胸が詰まる。

(評価:★4)

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