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[コメント] 海の神兵(1945/日)

初期ディズニーと同じく、我が国のアニメーション萌芽期の、貴重な名作と言えるだろう。☆3.9点。
死ぬまでシネマ

**ネタバレ注意**
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牧歌的かつ幻想的とも云える動物たちの集団描写に、当時のアニメーション技術の高さを見て驚きを禁じ得ない。製作者の叙情的な描き方にも感服する面がある。

しかし乍ら悲しいかな戦局が一挙に悪化してゆく時期での製作。この様な高い技術で、この様な表現を用いて、作品は日本の国策プロパガンダに徹してゆく。落下傘部隊の降下が子供向けとは思えない(一般向けの実写映画でも珍しい)位綿密に描かれており、昆虫標本作りに明け暮れていた手塚治虫等はここらにもきっとヤられてしまったのだろう。

日本が欧米から解放する南の土地には人語を解さない野蛮な獣たち(雄叫びをあげるだけ)。人間に教化されたサル達が文明である日本語(50音)を繰返し繰返し繰返し(hitsukoi!)刷り込んでゆく。ただ一人の人間である桃太郎の振舞いは、現代に於ける金 正恩にそっくりだ。子供の容姿を持った桃太郎は旭日将軍様の態度で、愚かで醜い賊軍に降伏を迫る(当時の少年たちはきっと皆山下奉文大将のマネをした事だろう)。戦時下の作品にも関わらず、狼狽える賊軍将校(こっちは英国軍のパーシバル中将か)が、聞き取りにくい(愚かさを強調する演出)ものの意味の通った英語を話しているのに感心した。

しかし桃太郎やサルなどの表情は寧ろ英国人のイラストに通じる気持ち悪さで、ワタシャ苦手だ。遠く湯浅政明等に通じる系譜なのか。

     ◆     ◆     ◆

(訂正) 上記commentで「我が国のアニメーション萌芽期」と書いたが、杉並アニメーションミュージアムに展示されている年表によると、我が国のアニメーションの歴史は1917年に始まり、大震災以降から40年代迄の作家・作品群は第二世代なのだそうだ。

(評価:★4)

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