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[コメント] 群青の夜の羽毛布(2002/日)

ほんじょさんの透明感、は演技ではなく持ち前。 だからここでは、藤真利子の存在感を特筆しよう。 お母さん、コワすぎです。 ほんじょさんと一緒に怒られてるみたいに、ビビってしまいました。
木魚のおと

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







すごくいい映画だと思ったけど、あえて難点を言えば、本上演じるさとるにとって、恋人の鉄男(玉木宏)がどうしても必要な人だと見えなかった。 劇中でさとるがふと洩らした言葉、

「鉄男じゃなくてもよかった、連れ出してくれる人なら」(うろ覚え)

これは、鉄男の気を引くため(あるいはわざと突き放すため)の言葉で、さとるの本心ではないかもしれないけど、さとるにとってかけがえのない人物というには、鉄男はあまりに普通に描かれすぎて、クセがないのだ。 もともとの狙いが、不健全な家庭にこれ以上ないほど健全な青年が入り込むことによって、母親の威厳でかろうじて支えられてきた人間関係のバランスが崩されるというものであること、それは理解できる。 だが玉木演じる鉄男には、そのバランスを崩せるほどの強烈な存在感がない。

「母と娘」という関係では決して母に逆らうことのできなかったさとるが、「女同士」という対等の立場におかれたことを知った途端、あのコワい母をも凌ぐ勢いで「クソババァッ!」と叫ぶ。 この場面で、普段「へもへも」を自称する本上の演技に目を見張り、圧倒されはしたが、さとるは本当にそれほど真剣に鉄男を愛せていたのか、鉄男が必要だったのか、淡い疑問を感じた。

(ちなみにこの場面、原作では反抗期を迎えることなく育った娘が初めて母親に抗うという意味合いを持たせ、あえて「くそばばあ」など子供っぽい表現を用いたと思われる。それを、さとるにも母親と同じ血が流れていることを暗示するような、鬼気迫る演出に持っていったのは見事というほかはない)

そしてラストシーン、それぞれが今まで縛られていた家族関係から解き放たれ、新しい歩みを始める中に、とうとう母親のその後が語られることはなかった。 この物語で、もっともみじめに傷ついているのは、母親だったのかもしれない。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)ダリア[*] ピロちゃんきゅ〜[*] makoto7774

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