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[コメント] 息子(1991/日)

エンディングの余韻が好きです。
chokobo

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







えっ、もうこれで終わり?

という最後のシーンに写る山々を見てしばらくじーーんと感慨にむせぶような気分を味わいましたよね。

地方と都会、そして家族の在り方について、現実を直視しながらも、あまり明るくないであろう老人の老い先を印象的に綴っていますね。

私は正直申しまして山田洋次作品を高く評価してこなかった者です。

松竹蒲田が斜陽に陥ってしまった時代を支えた『男はつらいよ』シリーズの粗雑な扱いをあまり良く思っていませんでした。

どのお話もありきたりで、どれがどんなお話だったかも思い出せないような作品を連作する職業監督山田洋次を自らの意思のない者として分類してきました。

しかし『渥美清』さん亡きあと、解き放たれたように充実した作品を作る山田洋次監督を誤解していたことに最近ようやく気付いたんですね。

山田洋次監督がかつて1970年に作った『家族』という作品と比較するとよく理解できるのですが、あの作品から山田洋次監督は徹底して「家族」を中心にドラマを築き上げてきたんだと思うんです。

そういう視点で見ると、この作品も現代の家族の在り方を丁寧に描写していますし、老いた老人がかつて抱いていた家族のイメージが崩壊する瞬間をできの悪い息子(永瀬正敏)が聾唖の娘(和久井映見)と結ばれることを祝福する気持ちになることで、家族の愛情を再認識する、といういわばありきたりのテーマを丁寧に描いていることに好感が持てました。

思えば「寅さん」シリーズだって「家族」がテーマですもんね。

これだけ長く誠実に、このテーマだけを追い求める作家はいなかったでしょう。

そして時代がこの「家族」を失いつつあることも深く認識するところだと思いますね。

2010/07/06 自宅

(評価:★4)

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