しかし井川比佐志に暴れてもらったら、そりゃ大変そうだ。

この映画のポイントは”命”に尽きる。”命”＝生命と魂の関係を裁判で決着しようという展開である。妻を殺した主人公は死にたいと思っているのか？否か？しかし本人は真実を語ろうとしない。そこで周囲が色々な憶測の中、ストーリーが展開する。

正直に言って、映画としての話は面白くない。そもそもなぜ『半落ち』なのかが語られない。結末が『半落ち』ということなのだろうが、冒頭は警察の物語のはずだった。しかし新聞記者の登場などから展開が全く狂ってしまう。いつの間にか主人公（容疑者）が妻を殺した後、警察に出頭するまで、空白の二日間に何が行われたのかを調べる話にすり替えられた。また主人公がドナーとなった相手の子供をマスコミから守ろうとする、という点もイマイチだ。わからなくはないが、唐突な感じがして説得力に欠ける。要するに面白くないということだ。

しかしこの役者達の演技ぶりは見事だ。演出か役者自身が自発的に感化されているかはわからないが、樹木希林がスゴイ。この映画の彼女の演技を中心に物語りががらっと展開するよう思える。素晴らしい演技だったと思う。ほかに奈良岡朋子、西田敏行らベテラン俳優が絶妙の演技で物語りをもっともらしくしているという構図だった。

最後の裁判でアルツハイマーの元裁判官だった父を持つ裁判官と、アルツハイマーだった妻を殺した元警部がぶつかるとうシーンが、命に対する価値観と生きたいのか死にたいのかを問うシーンとなっている。主人公は死にたいと思っていたのだが、ドナー先の子供に生きることを宿命づけされるのだ。