日活ロマンポルノを経由してメジャー監督の道を歩む中原俊監督だが、思い起こせば『櫻の園』の演出には圧倒されました。あの少女達のささやき、つぶさな会話とその不思議さ、そして櫻というモニュメントと申しましょうか、とても象徴的に描いていて感心しました。

　今回も文学作品の虜となった者たちが詐欺師という役回りで集合するあたり、原作にも後押しされてなかなか面白かった。もちろん文学を茶化しているということではないのですが、詐欺師という媒体で表現する手法がなかなか面白いなあと思った。

　中原監督の起源は日活ですが、ロマンポルノのロマンの部分がいくつものシーンに現れていて楽しかったなあ。女性二人の間をカメラがキャッチボールするようなシーンとかね。

　でもね、テレビドラマ的であるところが、らしくないようにも思える。もっと生々しくも淡々とした世界が中原監督にはあるはずだ。キャスティングはともかく、もっとどろどろした部分があっても面白かったんじゃないかな。

　豊川悦司は相変わらず面白い。こういうキャラクターもこなせちゃうというところに人気が集まるんでしょうね。セリフも相変わらず棒読みだしね。たいしたもんだね。