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[コメント] 河童のクゥと夏休み(2007/日)

この映画の風景はまさに今自分が住んでいる場所の近くであり、映画そのものも家の近くで作られたということもあって、大変臨場感を感じてしまった。
chokobo

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







駅の名前も川の名前も家のすぐ近くである。

子どもとサイクリングに行くエリアだ。

だからどうしても思い入れが強くなる。そんな映画だった。

ある意味平凡に作られた映画に見えるし、大変地味なイメージの映画だが、内容は良くみると辛辣であ、良く言う「忘れられた日本人」が描かれている。

この河童の律義さ、礼儀正しさ。これもまさに忘れられた日本人の描写だろう。

主人公の少年の友達や、この映画の前半で語られる主人公の少年ですら、いわゆる今の日本人であって、礼儀も情も何もない。そんな小学生の中に、この礼儀正しき河童の存在は奇異に映る。しかしそれが本来の日本人だったのだろう。

冒頭、江戸時代に、侍に頭を下げるクゥの父親の律義さ。このシーンから一貫して、河童が律義で礼儀正しい存在であることが語られてゆく。

もうひとつはマスコミの恐ろしさだ。これもこの映画の大きなテーマになっている。この現象、パパラッチに関しては、日本だけの特殊現象ではないのかもしれないが、河童めがけて押し寄せていくるマスコミとその周辺の脅威。これはある意味恐怖である。

先日亡くなった、三浦和義氏も同じ環境の中で生きた時代の方だった。同じテーマがここでも語られている。

そして子供たちの孤独だ。最初にクゥを探し当てた主人公の少年と少女。彼女はクラスの皆から全く相手にされず孤独を味わう。

マスコミに追いかけられることをきっかけに主人公の少年も同じ孤独を味わって、初めて彼女の思いを共有できる。そんな関係が描かれる。

この主人公の家族があまりにも平凡で平和なだけに、周辺の子供たちやクラスメートの孤独が浮き彫りになるような話である。これもとても良く描かれていたと思う。

おっさんと言われる飼い犬のエピソードも同じだ。仲良しだった飼い主に虐げられた話も、全く同じ孤独を描写している。そしてこの犬の死。河童もいよいよ都会で孤独を味わうことになるのだ。

アニメの魅力はこれだ。

かつて宮崎駿監督が『となりのトトロ』で描いたような非現実と現実。これをリアルに表現できるのがアニメの醍醐味だろう。

とかく複雑化したアニメが流行する中で、こういったシンプルで、且つ時代を表現できる魅力を改めて感じることができた。

日本のアニメがまだまだ進化する可能性を堪能することができてうれしかった。

(2008/11/02)

(評価:★5)

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