[コメント] 椿三十郎(2007/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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まずは織田裕二のがんばりを評価しよう。彼は世界の三船に近づこうと努力した形跡がありますね。それだけでこの映画はそれなりに評価して良いと思いますよ。まぜなら、リメイクに成功なし、といわれるこの世界で、それなりの結末を導いたこと。それは現代的な若者たちの目を惹き、そして原作を見ている人たちをも納得させなければならないという苦悩に挑戦するわけですから、それなりの覚悟があったんだと思います。その覚悟を感じることができたこと評価します。
ラストのワンシーンもそれなりにアレンジしていて良かったと思います。
実はこのシーンは脚本に全く詳しいことが書いていない。だからどのように表現しても許されるんですね。鞘に刀を納めるシーンなんて、原作には全くなかった。
それは、当時に日本をも思わせます。
当時の高度経済成長の中で、当時の『椿三十郎』は明らかに発展途上の日本を象徴していたと思うんです。
今回の『三十郎』は、もっと人間的なような気がします。大勢の敵に刀を向けては息を荒くし、最後の対決シーンも”一撃”ではなく、お互いが刀を鞘におさめよと努力するあたり、いかにも現代的な感覚を覚えます。
いずれにしても、黒沢映画が古典化してゆく中でいろいろな解釈があって良いのではないか、というのが個人的な感想です。良いものもあれば悪いものもあるでしょう。
事実黒沢明はシェークスピアやドストエフスキーに挑戦しているわけです。
だから、誰かが黒沢明に挑戦することがあっても全く不思議ではありません。むしろ、あの名作を復刻する勇気に敬意を表したいと思います。
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