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[コメント] 明日への遺言(2007/日)

主任検察官バーネットフレッド・マックィーンってスティーヴ・マックィーンの息子さんなんですって?
chokobo

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







小泉堯史監督作品は一通り見ているが、本作が最も充実しているように思えました。

まずはこのカメラワーク。黒澤組で鍛えられた複数カメラにより、ワンシーンを一気に撮影していることがわかります。そしてロングショット。役者の演技をアップのみに頼らず、全身で演技することを求め、その姿勢がスクリーンを通じて伝わる映像だったと思います。

この映画を支えている外国俳優達の演技は見事です。冒頭、この裁判に至るまでの経緯を知る限り、日本人としての被害者意識が先行して、右傾化した考えに執着してしまいそうですが、合衆国のジャッジが公平であることをあらゆるセリフが浮き立たせてくれて安心できます。

何より、この重圧を押しのける藤田まことさんの演技は素晴らしい。きっと「岡田資中将」自身が本当にこのような人物であったことは間違いないと思いますが、藤田まことさんはその役を十分に味わい深く、淡々と演じています。

この淡々とした演技が日本という国を象徴しているし、アメリカ人にもその真意が伝わる結果となっているように思えます。

岡田資中将(藤田まこと)の一言一言はとても重く感動を呼び起こします。

判決が下され、手錠をかけられ、法廷を去る前に、

「本望だ」

と一言。この言葉に全てが託されていると思いました。

部下を思い、日本の将来を部下に委ね、臆することなく挑む姿勢が伝わります。

こういう映画が日本にどんどん少なくなることでしょう。むしろ、かつての戦争を正当化する趣もないわけではありません。そんな中、岡田中将の志が淡々と画面からあふれるこの映画に傾倒しないわけにはゆかないと思います。

生きる姿勢とは、必ずしも敵対するものを否定するものではなくて、自らの意思と相反する意思とを冷静に判断し、自らの信念を正確に冷静に伝えることが真実だということですね。

数ある裁判劇の歴史に名を残す名作だったと思います。

(評価:★5)

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