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[コメント] TOKYO!(2008/仏=日=韓国=独)

クールジャパンを標榜するトウキョウの恐ろしさよ・・・
chokobo

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







結論から申しますと、外国人の目で見たトウキョウとは、すでにこのような世界になってしまったということだと思うんです。このような・・・とは、つまり、日本がかつて描いてきた高度成長前の日本ではなくて、自ら悲しい破綻の道を選んでしまった日本。ということですね。破綻してます。

でもこの感覚を私は決して悲観しているわけではなくて、そんなことは、お隣の韓国だって中国だって、同じアジアでいえばあらゆる国が欧米化という道を選び、自由主義、民主主義という甘い言葉に吸い寄せられて、人としての互いの尊厳やらお気遣いやら、配慮やら、慈しみだのという認識を失ってしまっているわけで、そういうネガティブな意味でこの映画を楽しく拝見しました。

この映画に出てくる人物は皆さん”おかしな人”ですね。最も”おかしな人”というと怪人メルドでしょうね。メルドそれ即ちマーダー=殺人ですね。殺すことが自分にとって必要なことなので、地下道の怪人は人を殺すことをなんとも思っていませんね。だから何も悪びれません。『ぐるりのこと』に出てくる狂気的な刑事事件の裁判風景に出てくる正にあの”おかしな人”を、トウキョウを舞台になぜか外国人(ドゥニ・ラヴァン)が演じています。そしてそれを通訳する弁護人と日本人。この”おかしな”関係も正に外国人から見た日本そのものなのではないでしょうか?

「インテリア・デザイン」と「シェイキング東京」はとても似ている関係にありますね。いずれも現実逃避型の登場人物たちですね。従っていずれもズレてます。ズレてるから、観る側はとても違和感を感じるのですが、間にはさまれた「メルド」の印象があまりにも強烈で、前後の2作を観るととても温かい感情に落ちてしまいます。不思議ですね。

「インテリア・デザイン」の透明人間も「シェイキング東京」の引きこもりにしても、いずれも社会から完全に離脱した人、あるいは社会の全く役にたっていない人の集まりですよね。そんな関係を違和感なく伝えることで、この映画の正当性が維持できたんだと思います。

3名の監督で唯一過去の作品に接したことがあるのがポン・ジュノさんです。この方は天才ですね。『グエムル』のときも思いましたが非現実的な世界を丁寧に丁寧に描いて、現実世界と見事に交錯させることに成功しています。過去の作品は言うまでもなく韓国映画として見たわけですが、日本人の俳優を使って、日本人のスタッフにより、見事に日本人そのものを描いています。素晴らしい才能を感じました。

2009/8/16

(評価:★4)

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