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[コメント] スラムドッグ$ミリオネア(2008/英)

この映画がどんな理由であれハリウッドでアカデミー賞を受賞できたことが凄い!
chokobo

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







まずは申し上げたい!

この司会のみのもんたはひどい悪役でしたね。テレビの内幕や裏側とはこういうものなのでしょうか。本当に許せないんなぁ。

ということで・・・

幼い頃の貧しい思いとかっていうのは、私(1962年生まれ)の親の世代にもっと臨場感が伝わるものだと思います。

私の父は昭和9年(1934年)生まれで、当時といえば昭和初期ということもあって産めや増やせのドサクサの時代だったようですね。

そんな父は10人兄妹の9番目ということで、親からは全く相手にされず、中学を卒業し3年間丁稚奉公に出され、高校に入学を許されたときの同級生は全員3歳年下だったそうです。

そんな私のような者の親の話を思い出すような世界がこの映画にはずっしりと重く、そして明るく描かれているのが感動的でした。

この映画の監督ダニー・ボイルの映画は過去数本しか見ていませんが、過去の経歴としては、それほど目につく映画を撮っていません。しかもいずれも俳優は有名ですが、内容が中途半端だったりして、それほど記憶に残る作品がないんです。『普通じゃない』などという映画は、観たことになっていますが全く記憶にありません。

そんな彼が、全く著名な俳優を排し、インドという先進国とは無縁の世界の内実に迫る作品に挑戦したことが、まず大冒険ですね。冒険した時点で何かしらの成功が保証されたものと考えるべきでしょうね。

この映画は常に不安定な位置から被写体を捕らえています。上から、下から、そしてカメラが斜めに傾いた状態など、常にこの映画は不安定要素に包まれています。

とくに主人公のジャマール達が子供の頃のエピソードは明るく暗い世界を行き来するものでいつも照明やカメラが不安定になっています。

ラティカとのエピソードもほとんどありきたりで陳腐な印象を残しますが、この映画全体がインドの現実、インドの内実をしっかりと捉えているところが素晴らしいと思いました。

時々写るマクロな視線。俯瞰から捉える貧民窟の屋根の数々など、その芸術的センスは見事ですね。過去の彼の作品では及びもつかないほど素晴らしい映像が繰り広げられてゆきます。

映画が終わった後、出演者全員が一緒になって踊るシーンは、現在のインド映画シーンを見事にキャッチしたもので、笑ってしまいました。

アメリカ経済がリーマンショックに落ち込んだこの年に、ちょうど中国とインドの新興国や途上国などの題材をベースに、かなり深く立ち入った映画を作ったスタッフに拍手を送りますが、商業化したハリウッド映画が、この映画を作品賞として評価した寛大な勇気にも敬意ほ表したいですね。

お見事でした。

2009/12/25(自宅)

(評価:★4)

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