[コメント] アバター(2009/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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とにかく圧倒的な映像で迫るこの映画は、「マジで映画なの?」という臨場感にあふれていました。その感情が冒頭のひと言。「あばたもエクボ」。この世界に思い切り引き込まれるエネルギーは凄まじいものがありました。
ジェームズ・キャメロンが果たしてこの映画で観る側に与えようとしたものとは、つまり”臨場感”ですね。きっと。その場にいること。その世界にいることをこの映画で求めようとしているように思いました。
最初パンドラという惑星に入るまでのプロセスは、それほど驚くべきシーンはありません。この類の映像には慣れっこになってしまった私たちは、その画面で展開される非現実をそれほど驚くべきものとは思わないでしょう。
しかし、ここに出てくるパンドラに生息する生き物たち(それは地球にもいそうな動物だったりするのですが)に接しているうちに、自分もその世界にいるような気がしてしまうんですね。これがこの映画の狙いなんだろうと思います。
そのうちアバターであることが自分であって、実際の人間としての自分から覚醒する展開はとても妙味があって面白いと思いました。
評価が分かれる点としては、この映画のストーリーを支えているのが、全て彼の過去の作品であったり、ことによると宮崎駿作品からの影響を受けていると思わせるところがひっかかります。
巨大な鳥獣に乗って空を飛ぶのは『風の谷のナウシカ』だったり。同じく、瀕死の者を生き返らせようとする触手なようなものが集まるシーンも同様ですね。空中に浮かぶ島は言うまでもなく『天空の城ラピュタ』を彷彿とさせますし、いずれも何かからインスパイアされていることが明白ですね。
そして地球人が乗るロボットは、かつてキャメロンが生み出した『エイリアン2』でシガニー・ウィーバーが操縦したものと大きく変わらないし、戦闘シーンに出てくる乗り物もどこかで見たことがあるようなもの。『スターウォーズ』でも拝見できる代物のような気がします。
科学の進歩が映画の様々なプロセスに影響することは否定しませんが、新しい映像は生み出せても新しい発想(イノベーション=創造力)に至っていない部分が目に付いた映画でもありました。
キャメロン監督というと、どうしても新しい映像への挑戦とリメイクという点をミックスした発想が印象的なので、そういう意味でいうと彼らしい作品だったとも言えるかもしれませんね。
でももう少し根源的な世界、それこそ宮崎駿監督がかつて挑戦してきた世界に突っ込んでもらっても良かったのではないかとも思うんですよね。
環境対人間。人類の滅亡を示唆すること。いずれも我々人類が直面する危機を映像化したことは評価しますが、この映画を未来永劫、歴史に残すのかというと、ちょっと気がかりですね。
あと最後になりますが、メガネをかけてこの映画を3Dで観ようとする方に警告です。結構重たいですよ。
2009/12/22(池袋)
そういえばWOW WOWで放映していた連続ドラマに『パンドラ』というのがありました。
この映画の舞台となるパンドラという惑星も、その箱を開けてしまう(人類が手を加えてしまう)という悲劇ですので、共通する認識があるような気がします。
人類は次々とパンドラの箱を開けまくって、次々と罪を重ねてゆくということを連想させますね。
2010/01/10(自宅)
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