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[コメント] 時をかける少女(2010/日)

不覚にも、最後の8ミリを見て涙する主人公の姿を見て泣いてしまいました。(2011/02/20)
chokobo

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







筒井康隆作品の普遍性をまずはあらためて認識しました。

この作品の時代背景は1970年代前半ですが、この作品が出版されたのは1960年代ですね。そして原田知世さんが主演された同名作品が1980年代。細田守版が2006年。でもってこれが2010年でしょ。(調べると1997年にも1本作られていますね。)

半世紀にもわたるドラマの不変性ってなんなんでしょうね。

まずひとつは、「時間と記憶」という概念でしょうね。

こういうと難しく聞こえますが、要するに時間をどんな時代にもあてはめることが可能なので、どのようにでもデフォルメしやすいということ。題材としてとてもリーズナブルなんですね。

それはシェークスピアなどの古典を現代によみがえらせることに似た感覚です。

そもそも、この物語の主人公は「芳山和子」と「深町一夫」の二人なわけです。

そしてこの二人がいろいろな時間に飛び回ることで、周囲の人物を巻き込んでゆくという単純なストーリーがこのお話をどんどん創造力豊かなものに発展させる力を持っている原点だと思います。

ちなみに細田守版の芳山和子は主人公から見て叔母さんに当たる方でしたが、本作では母親になっていますね。こういう脚色を促すわかりやすさがこのドラマの基本的な面白さだと思いますね。

今回の作品でフォーカスされるのは1970年代です。

これ、まさに私のような者が刺激を受けた世代。

タイムリープして主人公が飛び込んで出会った涼太(中尾明慶)の安アパートのポスター(ゴジラとか)は、私が熱狂した世代そのものですね。そしてこの涼太くんが映画研究会という同好会で作る作品がSFだったりするわけです。

今の時代からすると何とも子供じみた発想ですが、当時はSFXも何もない時代ですので、実写でSFを作ろうとすると、このようなぶざまなことをしなければ何も作れない時代だったわけですね。

36年前の大学生とともに母親(安田成美)の言付けを深町一夫(石丸幹二)に伝えようとタイムリープする少女・芳山あかり(仲里依紗)とのやりとりが、自らの心の記憶に留められるという展開もなかなか良かったと思うんで。

不覚にもあかりがこの8ミリのSFを見て記憶を失いながらも涙するシーンにもらい泣きしてしまいました。

この映画の魅力はここにも隠されていますね。

心の記憶

それは現実ではないかもしれないけれど、子供の頃に夢描いた幻想だったりしたものが、ある日デジャヴのように蘇ることって誰にでもあるのではないでしょうかね。

特に映画が好きで映画をずっと見てきた者にとって、このシーンは特に印象的なシーンになりました。

監督の技量もあると思いますが、今回は仲里依紗さんの魅力満載の作品になりました。

2011/02/20 自宅

(評価:★5)

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