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[コメント] 模倣犯(2002/日)

森田芳光復活!
chokobo

あれからどれほど時間が経過したかは知らないが、8ミリデビュー、ぴあフィルムフェスティバルで『ライブ・イン茅ヶ崎』などで注目され、ポルノ映画の助監督などを経て『の・ようなもの』、『家族ゲーム』、『それから』、『そろばんづく』・・・あの頃の森田が復活。それは今回の原作などに全く翻弄されずに、かのシュールで奔放な彼の存在は、今回この映画で主演中居君に投影されて見事な存在感を示していた。素晴らしい映画だったと思う。

個人的には森田作品では『それから』が好きだ。あの時代感とその出演する人物とセリフと予断を許さないカメラアクション。それはそれまで感覚として持ち得なかった映像世界であり美しい文学であった。

今回本作品で、その時代性を無視し、奔放さを復活させたがゆえに全く無秩序な映画となった。この無秩序は意味ないものではなく、この時代、そしてこのドラマの犯罪こそが無秩序であることを意味している。そしてテレビ、マスコミ、報道という無神経な存在と自分の生い立ち。全く不愉快きわまりない流れと映像。森田はよくぞこれだけのキャストをそろえ覚悟したことだろう。

山崎努といえば映画人の中では”何をするかわからない”と思わせる数少ない役者であるが、今回彼の役柄は”常識”を逸脱しようとしない。感情にまかせることをしない。そして自分に否があると認めれば修正する。ここ数年の山崎の役柄とは思えぬ常識ぶりである。それほどこの映画は崩れている。見事なキャスティングであった。

森田が復活した。しかし完全復活とは思えない。彼はもっと遠くを意識した映画を残すべきであって、この映画も少し間違えばヌーベルヴァーグを復刻しただけ、の作品に陥ってしまうであろう。それでも森田の今後に期待を抱かせる素晴らしい出来だったと思う。星が流れる、時代も流れる、そして森田も流れ続けることだろう。

(評価:★5)

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