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[コメント] レディ・キラーズ(2004/米)

The Gospel Tradition and The Criminal Tradition.
町田

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







今度はゴスペルですか。しかも、ボーイズIIメンとかゴスペラーズとか、 そういう軟派なソレじゃなくって、ブルーノートを使ったオリジナルでビンテージなソレ。ヒップ・ホップとの絡め方も流石はT・ボーン・バーネット一味ってな納得の出来。特にブラインド・ウィリー・ジョンソンから現役クワイアの生演奏への繋ぎは見事だったな。

しかし、映画自体は大して盛り上がらない。コーエン兄弟特有の奇抜でシュールな映像表現も殆ど観られない。これはどう頑張っても弁護しようの無い凡作である。

ウィリアム・ローズのオリジナル脚本を現代訳、舞台を英国からお得意の米南部に移したのまでは良かったが、他のアイデアは悉くお粗末。

主人公の「教授」は、多分、劇中でも何度も言及されるエドガー・アラン・ポー*を、外貌的にも内面的にも強く意識したキャラクタ、要するに痩せこけた不気味なインテリ紳士、だったのだと思うが、トム・ハンクスの演じる教授は、その髪型以外はちっとも雰囲気が出ておらず、福与かで人懐っこすぎて、「味付け」としての「引き笑い」もちっとも面白くなく、決定的に魅力薄だ。かのキャラクタ、ひいてはこの物語全体に、必要とされているのは俳優陣の「抑制された演技達者ぶり」などではけしてなく、「徹底した戯画化ぶり」だったと思うのだが、その意味で主導権を握る教授にトム・ハンクス、というのは致命的なキャスティング・ミスだったと思う。(*猫が大活躍するのはポーへのオマージュとして上出来。)

演出面についても問題大アリ。何度も訪れる泥棒たちの危機、例えばマダムの突然の地下室への訪問だとか、カジノのマスターへの贈賄だとか、演奏を聴きに訪れた有閑マダムらをごまかして詩を朗読だとか、ダイナマイト暴発だとか、そういったシーンの其々に、スリルのスの字も感じることが出来ず、従ってカタルシスを得られることもなく、これが余りに連続するものだから、物語の起承転結すらも曖昧となり、いつのまにか金を手に入れ、いつのまにか死に、そして、いつのまにか映画が終わってしまった、との印象を拭う事が出来ない。

全体の仕掛けよりも台詞の掛け合いを重視している点、「神を信じるものは救われる」との主題が日本人には馴染みにくかった点を考慮に入れても、3点以上は付けることが出来ない。

(評価:★3)

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